「夫に誤魔化しをきめる」褒められると、自分のクソ味が体にしみわたってつらい/ただの主婦が東大目指してみた

夫に誤魔化しをきめる   5月末

私の記念すべき受験生生活1日目の勉強時間は1時間未満。そして全く引越しの準備もせず、夕食はレトルトカレーをそれっぽくアレンジしたカレードリアだ。そして、極めつきには、夫が帰ってくる22時くらいまでずっとネットサーフィンを楽しんでいた。

心理学とかやりたいし、やっぱ私は文科三類かなぁ。

理系でも心理学ができるし、理系に転換しちゃうのもありかもしれないねぇ。

ちょっぴり罪悪感があるから、一応東大にまつわるネットサーフィンしかしなかった。

でも、これは間違いなくただの現実逃避だ。

まぁ、でも最後の晩餐って言葉もあるし、今日くらいいいよね。明日からがんばるし。そんなこんなで言い訳を考えていると、夫からラインが来た。

「今から帰るよ!」

このラインが来たということは、今から約30分前後で帰ってくる。さすがに今日の勉強量がどうだったとか、そんなことは聞いてこないだろうけど、引越し準備の進捗は目に見えるから絶対バレる。

ああっ! あんなに譲歩してもらって、念願の受験生になれたのにこのままじゃ......呆れられるよね。

い、いそいで引越しの準備をがんばった感じを出さなくちゃ! せっかくうまくまとまったのに、まーたケンカになって、権利をはく奪されるなんて絶対嫌だ。ああ、とりあえず、ええっと。本棚の本を段ボールに詰め込みまくって、ぱっと見やった感を出すか。それっそれっそれ。

「ただいま~」

あっ! 夫が帰ってきた! 20分間、全力で引越し準備をしたからさすがに汗びっしょりだよ。

「ただっち、引越し準備ありがとうね! カレーもつくってくれてあるし、なんかオレ、うれしいよ。ただっちが生まれ変わってくれたみたいでさ」

「う......うん」

なんていうか、あれだな、褒められると、自分のクソ味が体にしみわたってつらい。

明日は胸張ってがんばったって報告できるように、ちゃんと「未来の東大生」になろう。


 
※本記事はただっち 著の書籍『ただの主婦が東大目指してみた』(フォレスト出版)から一部抜粋・編集しました。
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