自分が持っている本をコピーして友人に配ってもいい?/法律・税金で悩んだらプロに相談

自分が持っている本をコピーして友人に配ってもいい?/法律・税金で悩んだらプロに相談 pixta_27728324_S.jpg今回は、市販されている本のコピーを配ることについての相談です。このような疑問はダンスに限らず、体操や料理、園芸など、さまざまなシーンで起こり得るので、対処法を知っておくとよいでしょう。弁護士の林 友宏先生にお話を聞いてみました。


【相談】
私はダンスサークルに入っていて、週に何度かダンスをしています。ダンスの振り付けがたくさん載っている本を買ったので、メンバー全員にコピーして配ろうと思っているのですが、何か問題はありますか。 (女性58歳)

 

林先生の【お答え】
著作者の許可がなければ、本のコピーを配ることはできないので注意しましょう。

 

私たちは普段、仕事のためであったり、書類提出のためであったり、日常生活でコピーをする機会がたくさんあります。このうち、市販されている本をコピーするということについて、どのような法律問題が関わってくるのかを見ていきましょう。

まず、本などの著作物を創作した作者(著作者)には、法律上、その著作物について、著作権という権利が認められています。この著作権は、公的な登録をしなくても、著作物を創作するのと同時に発生する権利とされています。この著作権の具体的な内容として、著作物を公表するかどうかを決めたり、他の人に著作物を使用させることを許可したりすることなどが認められています。

ここで、著作物をコピーすることができる権利は、複製権と呼ばれており、著作権に含まれる権利の一つです。そして、法律上、著作者は、その著作物を複製する権利を専有すると規定されています(著作権法第21条)。つまり、複製(コピー)権は、本来、著作者が独占していると定められているのです(なお、一般的に、本を出版する場合、出版社が本の作者から著作権の使用を認めてもらい、出版社は、作者に対して、著作権の使用料として印税を支払うという関係にあります)。

このことからすると、ご質問にあるように、本のコピーをすることは、その本の著作者の複製権を侵害することになることから、著作者の許可が得られない限り、認められないことになります。ただ、この複製権の保護には例外があり、著作物を個人的に使用したり、家庭内で使用したりするなど、限られた範囲内において使用する場合には、私的使用としてコピーをすることが認められているのです。

以上を踏まえて、今回のご相談を見てみると、ダンスサークル内のメンバーに本のコピーを配るということは、対外的にコピーを配ることになるため、相談者ご自身や家庭内での使用ということは難しく、私的使用の範囲を超えるものと判断される可能性が高いです。

そのため、サークル内のメンバーに本のコピーを配るためには、著作者の許可が必要だと考えられます。著作者の許可を得て、コピーを配ることまでは難しいかもしれませんが、せっかく本を買ったのですから、本に載っている振り付けをマスターして、たくさんダンスができるようになるといいですね。これからもダンスを楽しんでくださいね。

※「法律・税金で悩んだらプロに相談」そのほかの回はこちら。

 

自分が持っている本をコピーして友人に配ってもいい?/法律・税金で悩んだらプロに相談 cut5_081r.jpg

林 友宏(はやし・ともひろ)先生
弁護士法人梅ヶ枝中央法律事務所東京事務所所属。企業法務をはじめ、個人から依頼を受けて相続、交通事故、離婚、刑事事件など幅広い案件を担当している。

 
この記事は『毎日が発見』2018年6月号に掲載の情報です。

この記事に関連する「暮らし」のキーワード

PAGE TOP