【どうする家康】信長(岡田准一)のツンデレが炸裂...!「涙」からの「耳噛み」に視聴者動揺

日本史上の人物の波乱万丈な生涯を描くNHK大河ドラマ。今年は、松本潤さんが戦国乱世に終止符を打った天下人・徳川家康を演じています。毎日が発見ネットでは、エンタメライター・太田サトルさんに毎月の放送を振り返っていただく連載をお届けしています。今月は「信長と家康の関係性」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【前回】氏真(溝端淳平)との「兄弟対決」ついに決着。家康(松本潤)の「許し」は吉か凶か

【どうする家康】信長(岡田准一)のツンデレが炸裂...!「涙」からの「耳噛み」に視聴者動揺 morita_04@.jpg

イラスト/森田 伸

松本潤主演のNHK大河ドラマ「どうする家康」。本作は戦国の世を終わらせ江戸幕府を築いた徳川家康の生涯を、古沢良太が新たな視点で描く作品だ。本記事では4月放送分を振り返る。

4月放送ぶんの「どうする家康」は、なんといっても「あほたわけ!」。この家康のセリフのインパクトの強さに集約されるといっていい。

一向一揆をどうにかおさめ、恩義に揺れた今川家との関係も決着がついた家康の次なるミッションは、織田信長(岡田准一)率いる幕府軍の一員として越前朝倉氏を征伐すること。

しかし今回も一筋縄ではいかない。朝倉の軍勢が幕府軍に迫る裏で、信長の妹・市(北川景子)の嫁ぎ先である浅井軍も、幕府軍を目指して出陣。浅井の真意は、信長に反旗を翻し1万の軍で討ち取ろうとすることだった。もし朝倉・浅井に挟み撃ちにされれば、幕府軍も危うい。

「ここは危のうございます」。万が一に備え、退くことを提案する家康。それを聞き一笑に付す秀吉や光秀。信長もこれを「戯言」とし、「義の男」である義理の弟・浅井長政(大貫勇輔)が裏切るわけがないと言う。しかし家康は「義の男であるがゆえに、裏切ることもあろうかと」と反論。当然信長は「何が言いたい......どういう意味じゃ」と鬼の形相で詰め寄るも、家康は退かずにこう言い放つ。

「お主を信じられん者もおる!」

幼少の頃から、家康にとって「脅威」と「畏怖」の存在であり続けた信長。そんな信長に、家康はここまで言えるようになっていた。

いっぽう信長は「お前も俺を信じぬのか!」と明らかにショックを受けた様子。「お前の顔など2度と見たくない」「朝倉の次はお前じゃ」と家康に言い立てる。

そこで家康が捨て台詞のように言い放ったのが冒頭の言葉、「ふざけるな、あほたわけ!」である。そのとき信長の目に、光るものが...あの信長が、泣いた!? 信長、ここで泣くってどういう感情!? 従来の戦国大河で味わったことのない感情が動いていることに気付かされる。

とはいえ、本作の家康はやっぱりへたれ。「わしゃもうおしまいじゃ......」と自身の言動にひどく落ち込んでいた。しかし、彼の前に信長の家臣が現れこう言う。「徳川様がおられる時だけでござる。我が殿の機嫌が良いのは」。

なんだかいい関係性だ。そんな"信・家"の妙に「熱い」描写は、次の15話でさらに爆発する。裏切り者である浅井征伐を命じられ、躊躇していた家康。そこに信長がぐっと近づき、いきなり左の耳たぶをモミモミし、「乱世を終わらせるのは誰じゃ」と囁く。そして、いきなり左耳を"カプッ"とし、「へへっ」と笑う信長。「キャーーッ!」と声出そうだ。

そんななか、浅井から「ともに信長を討ち取ろう」という密書が届き、心揺らぐ家康。

「わしは......浅井につきたい......」「浅井殿が好きだからじゃ!」

こういう局面においても、あくまで自分の感情で動こう、選ぼうとする家康。まさかの告白宣言に小平太(杉野遥亮)も「えっ!?」と一瞬絶句する。そりゃそうだろう(笑)。

どうするどうする...。今なら信長を討てるかもしれない。しかし、たとえ討てたとて、その先にはさまざまな困難が待ち受けていることを家臣が冷静に説く。信長亡きあと、将軍はどうなる、三河はどうなる、遠江は、尾張は、武田との関係性はどうなる...。

結局、家康は信長を裏切らなかった。実際、信長を討った光秀は、誰もが知るようにああなるわけで。それを考えると、家康はここで正しい判断を下したといっていいのかもしれない。

それにしても金ヶ崎の戦いも姉川の戦いも、それぞれ「なんやかんやありましたが」「姉川合戦を大勝利に導いたのでございました」と、合戦そのものはあっさりナレ処理で済ませるという描き方をし、弱い心、小さな存在たちのそこにいたる葛藤や逡巡、心の動きを、「どうする」の名のままに、ひたすら描写する、いよいよ本作の方向性も明確に見えてきたような気がしてきた。

いろいろと小狡くゲスい秀吉、すでにいろいろなことを内に秘め行動していそうな光秀。そしていよいよ信玄も本格的に動き始める。5月も、目が離せない展開はつづく。

文/太田サトル
 

太田サトル
ライター。週刊誌やウェブサイトで、エンタメ関係のコラムやインタビューを中心に執筆。

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