【どうする家康】氏真(溝端淳平)との「兄弟対決」ついに決着。家康(松本潤)の「許し」は吉か凶か

日本史上の人物の波乱万丈な生涯を描くNHK大河ドラマ。今年は、松本潤さんが戦国乱世に終止符を打った天下人・徳川家康を演じています。毎日が発見ネットでは、エンタメライター・太田サトルさんに毎月の放送を振り返っていただく連載をお届けしています。今月は家康の「許す」という選択について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【前回】「大河どこいった!?」コミカルな展開の中で輝く登場人物たちの「可愛らしさ」

【どうする家康】氏真(溝端淳平)との「兄弟対決」ついに決着。家康(松本潤)の「許し」は吉か凶か morita_03@.jpg

イラスト/森田 伸

 松本潤主演のNHK大河ドラマ『どうする家康』。本作は戦国の世を終わらせ江戸幕府を築いた徳川家康の生涯を、古沢良太が新たな視点で描く作品だ。本記事では3月放送分を振り返る。

3月の見どころは、なんといっても26日放送の第12話「氏真」に尽きるといっていいのではないだろうか。

少年期に今川家に人質として連れてこられた家康(当時は竹千代)。人質でありながら、領主である今川義元(野村萬斎)は、時に厳しく時に優しく理解ある育ての父のような存在であった。そして義元の息子・今川氏真(溝端淳平)と家康は、親友、兄弟のように切磋琢磨しながら成長してきたことが第1話より丁寧に描かれている。

物語は、これまで家康と氏真の関係性を大きな軸のひとつとしてきた。

なかでも大きかったのが、家康の正室・瀬名(有村架純)をめぐるあれこれ。

そもそも瀬名は、氏真が「自分の妻としたい」と義元に願い出ていた。しかし義元はこれを却下。義元は、「勝った方を瀬名と結婚させる」というルールのもと、実の息子である氏真と、人質の身である家康を戦わせたのだ。結果、ここまで本来の実力を見せていなかった家康が初めて本気をみせ、瀬名を勝ち取ることに。

その後、瀬名を駿府に置いて出兵した家康は、信長側につくという苦渋の決断を下し、今川家と敵対。今川を裏切った家康に激怒した氏真が、瀬名とその家族を人質として利用したことで、兄弟のように育った2人の溝は深すぎるものとなった。

ここまで描かれてきた氏真の哀しさ。そして寂しさ。

父を失い、弟のような存在だった家康と対立。今川家は次第に弱体化し、ついに東から武田信玄(阿部寛)率いる武田軍、西から徳川軍がせまり、いよいよ追い詰められてしまう。

そんな氏真のもとに、いよいよ家康が、氏真にとって最大の憎しみの対象に変化した家康本人が現れる...。

兄のように慕っていた氏真に家康がとどめを刺す残酷な展開と思われたが、切腹しようとする氏真を「嫌じゃ!」と決死の顔で止めたのは、当の家康本人だった。

家康は、氏真に「死んでほしくない」という。

家康の言葉を信じない氏真。

「父上は、わしを認めなかった。誰もわしのことを......」

彼はかつて父に放たれた「(お前には)将としての才能は、ない」という言葉に苦しんでいた。

少々ファザコン気味にも描かれてきた氏真にはあまりにも辛い一言。

しかし氏真の妻・糸(志田未来)が明かした真相は違った。

「才能がない」の言葉には、続きがあったという。

たしかに、氏真には将としての才能はないのかもしれない。しかし、夜な夜な努力し鍛錬する姿を見ていた父・義元は、その姿にこう感じ取っていた。

「己を鍛え上げることを惜しまぬ者は、いずれ天賦の才ある者を凌ぐ」

深すぎる、父からの信頼と愛情。

家康も涙を流し、今川家そして義元の描いた夢、兄のような存在の氏真を裏切ってしまったことについて、頭を下げ、素直に謝罪。

氏真が回想するありし日の駿府の国は、みんなが笑顔で幸せそうな日々、思い出すのは笑顔の思い出ばかり。戦乱の世のつらさが浮き彫りにされていく。

家康の「許し」によって、1話から続く今川家、氏真との大きなストーリー、確執や運命のようなものも、ついに決着。さながら第一部完といった盛り上がりをみせた年度末の放送回となった。

許すということ。それが本作が描く家康の大きなキャラクター性だ。

2月から続いた一向一揆が終結した第9話では、家康を裏切った家臣の夏目広次も、助命嘆願が多数寄せられているとし、「謀反の罪、不問といたす」と、許す。

さらに、同じく家康を裏切り、敵の軍師をしていた本多正信についても、結果的に「許し」の判断を下す。

気弱で「どうする」「どうする」と自他ともに問われてばかりの家康だが、考え抜いた末の決断はいつも「許すこと」。優しさと強さゆえできる決断だ。

しかし...氏真を逃したという事実に、当然武田信玄は大激怒。何か手が打たれることは確実。武田に敵対するか。いや武田は強い...。悩む家康。どうする家康? 決断は4月へ続く。

文/太田サトル
 

太田サトル
ライター。週刊誌やウェブサイトで、エンタメ関係のコラムやインタビューを中心に執筆。

PAGE TOP