【どうする家康】徳川家康(松本潤)は「虎」か「兎」か。最恐・信長に立ち向かう「原動力」は

日本史上の人物の波乱万丈な生涯を描くNHK大河ドラマ。今年は、松本潤さんが戦国乱世に終止符を打った天下人・徳川家康を演じています。毎日が発見ネットでは、エンタメライター・太田サトルさんに毎月の放送を振り返っていただく連載をお届けします。今月は「ヘタレ家康の原動力」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【どうする家康】徳川家康(松本潤)は「虎」か「兎」か。最恐・信長に立ち向かう「原動力」は morita_01@.jpg

イラスト/森田 伸

松本潤主演のNHK大河ドラマ『どうする家康』。

本作は戦国の世を終わらせ江戸幕府を築いた徳川家康の生涯を、古沢良太が新たな視点で描く作品だ。

本記事では1月放送分を振り返る。

『どうする家康』の家康は、「どうする!?」「どうする!?」とうろたえまくる、か弱き"白兎"として我々の前に登場した。

第1話は、松本潤演じる松平元康(のちの家康)が、戦場からこっそり逃げ出し、途方にくれた表情で「もう嫌じゃ!」と嘆くシーンで幕を開ける。

戦乱の世に終止符を打ち、その後200年以上続く江戸幕府を築いた人物。

「鳴くまで待とう」というホトトギスの例えのごとく、慎重に好機をうかがうイメージ、はたまた狡猾な面もあわせ持つ狸おやじ的なイメージ...。

それらとまた違う「へたれな」兎の家康が、そこにいた。

三河の松平広忠の子として生まれたものの、戦乱のなか駿河の今川義元(野村萬斎)のもとで「人質」として成長、やがて今川家家臣の娘・瀬名(有村架純)と結婚した元康。

しかし、かつて父に仕えた家臣たちと再会し、彼らの"松平家再興"への思いに突き動かされる。

義元の尾張への進軍の際は、織田軍の攻撃を受ける大高城に兵糧を届ける任務についた元康たち。

無事辿り着けたものの、元康のもとに届いたのは、桶狭間で義元が討ち死にしたという知らせだった。

そこへ近づく、織田信長(岡田准一)率いる織田軍。

幼いころに信長から受けた肉体的・精神的なトラウマもあり、激しく動揺する元康。

妻子が待つ駿府へ戻るか、故郷・三河へ進むか。

「どうする!?」と決断を迫られる元康をよそに、「待ってろよ、俺の白兎」と、討ち取った義元の首を投げ捨て、不敵な笑みを浮かべ進軍する信長。

できることなら逃げ出したい白兎...。

しかしこの兎、母親である於大の方(松嶋菜々子)が、「寅の年、寅の日、寅の刻に生まれし竹千代である!」と生まれたときに誇らしげに伝えたごとく、心に「虎」を抱く兎だった。

「どうする!?」と周囲に問われ、自問自答し、ギリギリまで追い詰められたそのときに、内に秘める「虎」が姿を表す。

周囲が思わずあっけにとられるほど、気迫あふれる「虎」モードへの切り替わりは、どこか変身ヒーローのようなカタルシスもある。

しかしいっぽうで、現時点までの元康の最大の行動原理は、駿府に残してきた瀬名の存在という、超個人的なことでもある。

第1話で人形遊びに興じる姿を瀬名に目撃されて以来、人目につかぬようひそかに遊びながら互いの思いを育んできたふたり。

そんななか、今川家の嫡男・氏真(溝端淳平)が瀬名を側室にしたいと言い出した。

氏真の父である義元は、元康vs氏真の手合わせをさせ、勝った方に瀬名を与えるという条件を提示。

いつもは今川家の嫡男である氏真に気を遣ってわざと負けていた元康であったが、このとき初めて本気を出して勝利した。

その後も、早くいろいろ解決させれば駿府で待つ瀬名に会えるからという理由が元康の大きな原動力となっている。

しかし、元康の背負う運命は、はるかに大きい。

織田軍を前にした元康は慌てて瀬名の待つ駿府へ戻ろうとするが、家臣団は故郷・三河へ行きたいと猛反対。

松平家の当主であるゆえ、家臣たちも大きな存在だ。

ただ今川家への恩義も大きい。

重い荷物を背負うからこそ勝手な決断ができない。

弱くて優柔不断なだけではない。

どうする、元康...。

たとえ史実を知っていたとしてもその兎の決断を見守りたくなってしまう。

第3話では、今川氏真から、織田軍を打ち破り駿府に帰るよう書状を受け取る。

駿府に戻りたい元康は一瞬喜ぶも、現在の兵力ではまず不可能な現実が立ちはだかる。

松平家のため、故郷のためには織田軍につくほうがいいのではないか。

しかし、駿府で待つ瀬名と子どものことを思えば今川家を裏切ることもできない。

そこへ伯父の水野信元(寺島進)が連れてきたのが、生き別れの実母・於大(松嶋菜々子)だった。

再会の喜びもつかのま、母の口から出た言葉は、今川と手を切れというもの。

しかし、今川のもとには瀬名と子がいると言う元康に、母が言い放った一言、「つまらぬことです」。

今川か、織田か。

家族か国か。

逡巡の末、今川家を切り捨てるという決断をする元康。

それによって当然、妻・瀬名の運命も危ういものとなる。

氏真にとらわれた瀬名から元康のもとへ届いたのは、血文字で書かれた「たすけて せな」という書状、そして、瀬名が肌身離さず「お守り」として大切にしていた元康手彫りの兎だった。

決意し、信長に相対する元康。

信長に突きつけられた刀を素手でつかみ、血を滴らせながら力強い眼差しで「虎」は宣言する。

「今川を滅ぼします。そして妻と子をこの手で取り戻します」

今川氏を討ち、瀬名を奪還する。

果たしてその策は成功するのか、瀬名と元康の運命はどうなっていくのか。

第4話ではのちの豊臣秀吉となる「猿」こと木下藤吉郎(ムロツヨシ)も登場し、三英傑揃い踏み。

瀬名奪還のため伊賀忍者・服部半蔵(山田孝之)らをつかう本多正信(松山ケンイチ)らも新たに登場、怒涛のハードモードのまま加速する乱世、2月も毎週「どうする!?」「どうなる!?」満載間違いなしだ。

文/太田サトル
 

太田サトル
ライター。週刊誌やウェブサイトで、エンタメ関係のコラムやインタビューを中心に執筆。

PAGE TOP