みなさんは毎日お風呂に入っていますか? 最近はシャワーだけで済ませてしまう人が増えているそうですが、シャワーだけでは体がしっかり温まらず、十分な効果を期待できません。そこで今回は、過去の掲載で反響のあった、東京都市大学 人間科学部 学部長で教授の早坂信哉(はやさか・しんや)先生による「最高の入浴法」特集を再掲載。改めて知りたい「入浴の効果」についてお聞きしました。
高血圧
ぬるめの湯での入浴で浴後の血圧が下がる
「40度程度での入浴は、血管を拡げて血流を良くし、血圧を低くする効果があります」
気を付けたいのは、寒い脱衣所から熱い湯に突然入ることで血圧が急上昇するヒートショックなどの入浴事故。
予防には、たっぷりのかけ湯を。
【炭酸入浴剤で効果アップ】
湯に入れると泡が出る炭酸ガス系入浴剤を入れた湯につかると、血管が拡張され、血流が良くなることで、高血圧の改善につながります。湯温は、40度までを守りましょう。
《立ちくらみを防ぐには!》
□冷たいカランに触れる
□手や顔に冷たい水をかける
□ゆっくりと立ち上がる
湯船から出るときに立ちくらみを起こしそうになるのは、血圧が下がり過ぎるため。冷たいものに触れると交感神経がほどよく刺激され、血圧の下がり過ぎを防いでくれます。
糖尿病/脂質異常症
熱い湯は避けて 食後の入浴が安全
糖尿病や脂質異常症の方も、40度までの湯での入浴が安心です。
「お風呂に入ると血糖値が少し下がりやすいことが分かっているので、糖尿病の薬を飲んでいる方は、低血糖にならないように、空腹時の入浴は避けて食後に入るのがいいでしょう」と、早坂先生。
研究では、42度以上の熱い湯に入ると、血圧が上昇するだけでなく、酸化ストレスが発生して糖尿病に悪い影響を与える、血中のコレステロールを上げるといった可能性があることも分かっています。
【入浴前にも水分補給】
入浴で失われる水分はおよそ800ml。ですから、入浴前後で合計500~600mlの水分摂取を。まずは入浴前にコップ1~2杯分を摂ります。体に水分を吸収しやすい牛乳や麦茶も◎。
かぜ
湯気をたっぷり吸い込んで症状を緩和
「かぜのときも体調が悪くなければお風呂に入ってかまいません。なるべく水面に顔を近づけて、湯気をたっぷり吸い込むよう意識すると、かぜ症状の緩和を期待できます」
早坂先生が行った「どんな時に入浴事故が起こったのか」の調査では、体温が37.5度以上でお風呂に入ると、「呼吸困難になる」「意識がもうろうとする」などの症状を訴える人が増加したそうです。
高熱時の入浴は控えましょう。
《入浴前にここをチェック!》
□37.5度以上の熱がないかどうか
□お風呂上がりの湯冷めを防ぐ準備はできているか
【花粉症にも湯気がいい】
お風呂で湯気を吸うことは、花粉やアレルギー物質を洗い流すことにもなります。蒸気を鼻から吸い込むことで、血流が良くなると同時に鼻の洗浄にもなり、鼻づまりの改善に役立ちます。
肩こり/腰痛
たっぷりの湯を張って浴槽でストレッチ
肩こりや腰痛の主な原因は、血流の滞りと慢性的な筋肉の緊張。
そのため、入浴で全身を温めることが欠かせません。
「まずは肩までゆっくりと湯につかり、5分ほどして体が温まってから湯船の中で軽いストレッチをするといいでしょう」と、早坂先生。
入浴中は温熱効果でいつもよりも体が軟らかくなるのに加え、浮力があるため、よりラクに体を動かせます。
急性の腰痛の場合は、痛みが落ち着いてから行ってください。
【肩こりには】
頭の後ろで両手を組み、ひと呼吸。息を吐きながら、開いた両ひじを閉じる。
頭の上で片手をつかみ上に伸ばす。そのまま左右交互に気持ちよく体を倒す。反対の手も同様。
【腰痛には】
ひざを両手で抱え、背中を丸めたり伸ばしたりする。
浴槽の縁をつかみ、左右に体をゆっくりひねる
参考/『おうち時間を快適に過ごす 入浴は究極の疲労回復術』(山と溪谷社)
構成・取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/moeko