【舞いあがれ!】この「違和感」の正体は...? 「荒れた」今週の朝ドラ。脚本・演出の難しさを痛感

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「脚本・演出の難しさ」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【前回】「朝ドラヒロインあるある」は回避したが...視聴者をモヤつかせる「油断ならない人物」

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福原遥がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の第23週「飛躍のチャンス」が放送された。

モヤモヤや苛立ちを感じた視聴者が多かった今週。

残り4週となったこの段階で、まさか『ちむどんどん』的ご都合てんこ盛り週が来るとは。

しかし、今週脚本担当がメインライターの桑原亮子氏から再び佃良太氏に変わることが予告されていたため、実は視聴者はある程度予感していた。

また、金曜分放送直後に、様々な媒体がまるで擁護か代弁のように制作統括のインタビューを続々と掲載していることから、制作サイドも"荒れる"ことを予想していたことが伺える。

舞(福原)と元新聞記者・御園(山口紗弥加)が共同経営で立ちあげた「こんねくと」は、最初にパンチングメタルを製造する会社からの相談を受ける。

そこで、金属板に細かい穴を開けるデザインパンチングの技術で絵や模様が描けることを知った舞は、新商品としてランプ製造を思いつく。

しかし、照明には規定があるため、専門の設計士が必要になり、我妻(久保田磨希)に相談。

最初は難色を示したが、あっさり引き受けてくれ、ランプがあっさり完成。

一方、久留美(山下美月)は看護師としてのキャリアアップのために長崎でのフライトナースを目指すが、悩みの種は父・佳晴(松尾諭)のこと。

久留美は自分で佳晴に「ノーサイド」のママ・道子(たくませいこ)と一緒になってくれたら安心だと唆した。

にもかかわらず、佳晴が道子に、お互いイイ年だし、道子のようにしっかりした人と一緒になったら、久留美も安心・老後も安泰だという照れ隠しの無礼なプロポーズをして激怒されたいきさつを聞くと、「アホちゃう? そんなん誰でも断るわ!」と一喝。

そもそも自分の父を他者に押し付けようとしていたのに、それを棚に上げる久留美......。

共依存の父娘の闇は深い。

それにしても、同じ道筋を描いても、登場人物の言動にどことなく親しみや好感を抱いたり、逆にどこかカチンときたり不快になったりする、この違いの恐ろしさ。

脚本家や演出家という稼業が、いかに時代や受け手の世代・性別・置かれた環境によっても異なる、曖昧で言語化・理論化しにくく、にもかかわらず明確に存在する、人間の"感覚"という生モノを扱う難しいものであるかがよくわかる。

そんな中、舞と貴司(赤楚衛二)を毛布にくるまってラブラブさせるため、久留美と悠人(横山裕)の距離を接近させ、久留美の背中を押す係を悠人に担わせ、なおかつパンチングデザインの照明を使用させるために、偶然起こる台風と停電。

この必然性のない展開を経て、久留美は佳晴にフライトナースになることを打ち明け、承諾をもらう。

一方、舞たちが作ったデザインパンチングの照明を、大手インテリア会社の担当者が製造・販売を手掛けたいと言い、仙波(森下じんせい)のもとにやって来る。

担当者は1個1万円で売り出したいと言うが、利益を出すには最低3万円の価格になると御園が主張。

これがまさか3万円以上......?

誰がその値段で買うのかと言った大手インテリアメーカーの人の指摘はもっともすぎる。

この金銭感覚のなさ、やはり御園は記者時代に何をやっていたのだろうか。

舞は悩んだ挙句、パンチングデザインの照明を大手インテリア会社に任せることにした。

デザインパンチング部分のみ仙波の工場で行い、他は中国の工場に委託し、大量生産することになると言う。

「こんねくと」は結局、1カ月の間、テナントを借りて賃料を払い、ランプだけ作り、HPも完成していない状態で、照明の企画料などだけもらおうという話に。

これではIWAKURAくらい大きい会社になると、子会社でお嬢ちゃんを遊ばせる余裕があるのだと我妻に嫌味を言われるのも当然だろう。

トホホな展開はさらに続く。

佳晴は「こんねくと」に金属アレルギーの道子でも着けられる指輪の製作を依頼。

舞たちはチタンで指輪を作り、ラガーマンの姿で登場した佳晴のプロポーズを道子は受け入れる。

素人の舞がデザインした手作り感溢れる指輪で、はたして東大阪の技術力を発信できるのか。

そもそも金属アレルギーでアクセサリーを身に着けられなかった道子だからこそ、アクセサリーに対する憧れはあるだろうから、専門店でちゃんとした指輪を作ってもらうほうが良い気はするが......。

ともかく、「こんねくと」は「軌道に乗った」そうだ。

そんなおめでたい展開ついでに、舞が妊娠。

妙な劇伴も含め、責任は脚本ばかりでは決してないが、今週「片付けなければいけない問題」「盛り込まなければいけなかった要素」がはたして全体の何割程度だったのか気になる23週だった。

文/田幸和歌子
 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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