【どうする家康】「大河どこいった!?」コミカルな展開の中で輝く登場人物たちの「可愛らしさ」

日本史上の人物の波乱万丈な生涯を描くNHK大河ドラマ。今年は、松本潤さんが戦国乱世に終止符を打った天下人・徳川家康を演じています。毎日が発見ネットでは、エンタメライター・太田サトルさんに毎月の放送を振り返っていただく連載をお届けしています。今月は「登場人物の『可愛らしさ』」について。あなたの「推し」は誰ですか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【前回】徳川家康(松本潤)は「虎」か「兎」か。最恐・信長に立ち向かう「原動力」は

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イラスト/森田 伸

松本潤主演のNHK大河ドラマ『どうする家康』。本作は戦国の世を終わらせ江戸幕府を築いた徳川家康の生涯を、古沢良太が新たな視点で描く作品だ。本記事では2月放送分を振り返る。

2月放送の『どうする家康』は、今川氏真のもとに人質とされたままの愛妻・瀬名(有村架純)と子どもたちを取り戻す、題して"瀬名奪還作戦"と、家康三大危機のひとつ「三河一向一揆」で展開された。

新たな登場人物も続々登場してきたわけだが、どれもキャラ強め。

すでに活躍中の人物たちも生き生きと描かれ、コメディ要素とシリアス部分の絶妙なさじ加減も加わって、なんというかそれぞれに「可愛らしさ」を感じてしまう2月だった。

まず瀬名奪回編で登場したのが、山田孝之演じる服部半蔵。

先祖が忍びの郷・伊賀出身の伊賀忍者と思われるが、本人は「忍者ではない」と否定。

悪知恵に長ける"イカサマ師"本多正信(松山ケンイチ)とのやりとりの中で、「(自分は)忍びではない」「(忍者ではなく)武士として動く!」とわざとらしく主張するさまは、どこか『勇者ヨシヒコ』の戦国編のような、「大河どこいった!?」みたいな感覚にもさせられる。

しかも、諜報活動を命じられているにも関わらず、もうとっくに知れ渡った情報を家康に報告し、「遅い! もう知っとるわ!」と叱責される姿は、もはや伊賀忍者集団ごと愛しく見えてくる。

杉野遥亮演じる榊原小平太は、無邪気に戦場に一番乗りしたがる子犬のような直球の可愛さ。

いっぽうで本多平八郎(山田裕貴)は、でかくて無愛想&不器用っぽいけれど、奥底にはまっすぐ頼もしく熱いものが流れるギャップ的なものを持ち合わせる。

この2人、戦の場ではコンビのように活躍するようになり、7話で一向宗のにぎわう寺街へ家康とともに農民に変装して潜入した際は、「あそこの女子たちに声をかけてみないかい?」(小平太)と、2人でナンパ(?)にも挑戦。

マイペースにはしゃぎ回る小平太も、実は女性にかなり奥手でオドオドしている平八郎も可愛らしさが垣間見えるシーンだった。

もちろん、有村架純演じる瀬名は、奪還後も序盤のままの天真爛漫でとぼけた感じが魅力的。

侍女たちとのガールズトーク風なやりとりの描き方も、大河らしくはないが普通に微笑ましい。

一向宗の街に身分を隠していく際も、姫様であることがバレないように於大の方(松嶋菜々子)に" すす"で顔を汚されるのだが、ふざけてヒゲを描かれた顔の可愛さと言ったらもう...。

ほかにも一向宗の巫女・千代(古川琴音)にも神秘的な魅力が漂うし、槍をぶんまわす豪快なキャラ・渡辺守綱(木村昴)は、アニメ『ドラえもん』のジャイアン役も務める木村が演じていることもあって、「大河にジャイアンがいる(笑)」と話題を集めた。

当然、「我らが神の君」家康だって、弱くて繊細で、おどおどしてという白兎の可愛らしさを序盤から変わらず保ち続けている。

相変わらず家臣団に「どうする!?」と詰め寄られ困り果てる姿も、「情けない」というよりもはや愛おしさすら感じられる。

しかし、舞台は戦乱の世。

可愛い可愛いで世が動いていくわけはない。

やはり多くの命が消えていき、重く悲しい運命に翻弄される者も多い。

家康だっておどおどしているだけではない。

一国の長として国と民を守るべく、一向宗の寺から、強奪するかのように年貢を奪い取った家康。

その結果彼らは「仏敵」とみなされ、一向宗の信徒たちが一斉に武器を持って立ち上がる。三河一向一揆の始まりである。

民衆の心をつかむ一向宗の住職・空誓上人(市川右團次)を、服部半蔵たちが暗殺しようと潜入するものの、空誓側に付く「軍師」がこれを阻止。

この謎の軍師に家康たちは苦しめられていたが、彼の正体、それは家康側にいたはずの"イカサマ師"本多正信だった...。

これまでのヘラヘラとした表情から一変、冷静な切れものの表情を見せる正信。

全然可愛くなかった!

軍師の正体に愕然とし呼吸が荒くなる家康。

続きが気になる少年漫画の引きのように、2月の幕は降りた。

三大危機、どう乗り越えるのか、どうする、どうなる3月!?

文/太田サトル
 

太田サトル
ライター。週刊誌やウェブサイトで、エンタメ関係のコラムやインタビューを中心に執筆。

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