道ならぬ恋には「粋な別れ」で終止符を/大人の男と女のつきあい方

pixta_34384333_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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婚外恋愛なら「粋な別れ」を考えておけ

「さよならだけが人生だ」
『山椒魚』や『黒い雨』などの作品で知られる井伏鱒二が、漢詩の五言絶句『勧酒』を訳した文言である。

花發多風雨  花が咲けば風が吹き雨が降って花は散る
人生足別離  同じように、人が生きていれば別れは必ず訪れる


この「人生足別離」を、井伏鱒二は「さよならだけが人生だ」と訳したという。たしかに、人生には数多くの別れがつきまとう。気をつけなければならないのは、仕事であれ、プライベートであれ、相手との別れ方を間違えると人生そのものを台無しにしてしまうこともあるということだ。

とりわけ、恋愛できれいな別れ方をするのはむずかしい。古今東西、これをうまくできない男女がいかに多いかは、男女の別れを描いた恋愛小説が無数にあることを考えればよくわかる。外国のポピュラーソングのヒット曲はもちろん、日本の歌謡曲などはそのオンパレードといってもいい。やはり、男女の別れは永遠のテーマということなのだろう。
別れはお互いに納得ずくで関係を解消しないと、相手によっては後々まで面倒なことになる場合もある。ストーカー殺人などはその最悪例。とくに、どちらかが結婚をまったく考えないのであればなおさらだ。そういう事態を避けるために、結婚という選択肢が最初からないということを、お互いに確認しておいたほうがいい。

当人同士が納得していれば、婚外恋愛、あるいはセックスが主たる目的の関係を、私は必ずしも否定しない。ただ一つ、心がけておかなければならないのは「きれいな別れ方」だ。「人間は生まれたときから死に向かいはじめている」とはよくいわれることだが、婚外恋愛はつきあいはじめたときから、別れに向かっている関係なのだ。

知人の別れ方を紹介しよう。
彼は結婚していたが、未婚の恋人がいた。彼に妻がいることを、もちろん彼女も知ったうえでの関係である。
「私、赤ちゃんができたみたい」
ある日、彼は彼女からの電話でそう告げられた。お互い、結婚は考えないという約束は確認し合っている。数日後、彼は彼女と会って、こう切り出した。

「本当に申し訳ない。でも、君と結婚することはできない。認知することも無理だ。これで何とかしてほしい」
そういって、彼は50万円が入った封筒を差し出した。彼女は伏し目がちのまま、何もいわずにその封筒を受けとった。
「君とつきあえて愉しかった。でも、これで、もう会うのをやめよう」
「そうね。私も愉しかったわ」
二人の関係はこれで終わった。まだ好き合っているうちの別れである。

だが、この話には裏がある。そもそも、妊娠は狂言だったのである。それをいちばんよく知っていたのは、誰あろう、彼自身なのだ。
彼には、すでに奥さんとの間に二人の子どもがいたのだが、奥さんと話し合いこれ以上は子どもをつくらないということで、避妊のパイプカット手術をしていたのである。

妊娠したという彼女の嘘を承知のうえで、その嘘に呼応するように彼なりの別れ方を考えた。
「彼女はお金が欲しかったわけではないと思います。つきあっているうちに、結婚を望まないという約束を守れなくなってしまった。結婚という文字が頭をもたげてきたんでしょう。私の本当の胸の内を確かめるために嘘をついたのだと思います」

不倫を奨励するわけではないが、道ならぬ恋の別れ方は、このようにすべきだろう。
嘘をついた彼女を問いただすこともなく、自分の責任という形をつくって別れる。つまり彼は、別れる、別れないという修羅場も避けたわけだ。もし別れ方を間違えていれば、家庭を巻き込んでの大騒動になっていたかもしれない。

「不倫」といってしまえばそれまでだが、そんな男女の関係でも男なら通さなければならない筋というものはある。秘密の間柄とはいえ、身も心も通じ合った仲なのだ。
いつかは別れが訪れる恋愛なら、石原裕次郎の歌ではないが「粋な別れ」で終止符を打つのが男の器量というものではないだろうか。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です

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