ミスはあなたの能力が低いからではなく、脳の情報処理に関する「仕組み」のせいだった――こう聞くと、少しホッとしませんか? 精神科医であり脳科学に詳しい樺沢紫苑先生は、「ミスが起きるのは、脳への情報の入力=インプットか、脳から外界への情報の出力=アウトプットの過程なので、このときの脳のコンディションを整えれば、ミスを限りなくゼロに近づけることが可能である」と主張します。樺沢先生の著書『絶対にミスをしない人の脳の習慣』より、そのノウハウを学びましょう。
有酸素運動が脳のワーキングメモリを増加させる!
ド忘れや勘違いなどにつながる、情報のインプットの際に起こるミス。このようなミスをなくすために重要な対策は、脳の作業領域であるワーキングメモリを高めることだといいます。ワーキングメモリとは、例えるならばコンビニのレジ。稼働しているレジが多いほどより効率的に客をさばくことができるように、その容量が多いほど、早く的確に情報を処理することができ、ミスも少なくなるというわけです。
では、どうすればこの容量を増やすことができるのか。樺沢先生によれば、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動を習慣にすることだそう。「脳を鍛えるのに運動?」と驚かれるかもしれませんが、有酸素運動をすると、脳の神経を育てるBDNF(脳由来神経栄養因子)が分泌され、脳のネットワークが強化されるといいます。わずか30分のランニングでも、直後にワーキングメモリが向上したという報告もあるそうですよ!
脳のゴールデンタイムを活用して、アウトプット・ミスを防ぐ
取引先との商談やPCでの資料作成など、仕事上のミスの多くはアウトプット・ミスとして表れると樺沢先生はいいます。このようなミスをなくすのに有効な方法は、ミスをしやすい時間帯を避け、脳のゴールデンタイムを最大限に活用するタイムマネジメントだそう。
脳科学的に考えると、最もミスを起こしやすい時間帯は、脳が覚醒されていない午前3時前後、次いで、午前中の疲れが出がちな午後3時前後だとされています。逆に、ミスをしにくい時間帯は午前9時前後。特に、起床後の2~3時間は脳のゴールデンタイムと呼ばれ、1日のうちで最も集中力が高まる時間帯だといいます。
ミスをしてはいけない重要な仕事は、始業と同時に全力で取り組んで、さっさと終わらせることが正解ということになりますが、仕事量によってはそう簡単には終わりませんよね。しかしご安心を! この脳のゴールデンタイムは、工夫次第で延長することができると樺沢先生。
その方法とは、朝出勤するまでの時間に余分な情報を脳へ入れないようにすること。すると、起床直後の生き生きとした脳の状態をキープすることができるそうです。テレビやWebをみると、脳の中に膨大な情報が流れ込んで疲弊してしまうので、これらのことを避けるだけでも、脳のゴールデンタイムを午前中いっぱいくらいまで伸ばす効果があるといいます。
ミスをしないだけでも、周囲からの信頼感はぐっと高まるもの。ミスを防ぐ習慣を味方につけて、「出来る人」を目指しましょう!
文/寺田きなこ
『絶対にミスをしない人の脳の習慣』
(樺沢紫苑/SBクリエイティブ)すべてのミスは脳を最適化することで解決できる! 精神科医の樺沢紫苑氏が、最新脳科学でわかった「ミスをしない脳」を作る習慣を解説しています。