締め切り間際にならないと「本気が出せない」はホント?/仕事の渋滞は「心理学」で解決できる(6)

締め切り間際にならないと「本気が出せない」はホント?/仕事の渋滞は「心理学」で解決できる(6) pixta_7661137_S.jpg毎週水、木曜更新!

今、あなたは「たまった仕事」に苦しめられていませんか? 「たまった仕事」=「仕事の渋滞」は、人の「心」の働きを理解すること、つまり 「心理学」的なアプローチですべて解消できるのです。
書籍『仕事の渋滞は「心理学」で解決できる』で、あなたの「たまった仕事」を一掃し、「仕事の渋滞」を解消して、毎日スッキリ会社に通えるようになりましょう!

今回はその6回目です。

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前の記事「仕事をイッキにやるのは、記憶の新鮮さを確保したいから?/仕事の渋滞は「心理学」で解決できる(5)」はこちら。

 

「危機好き」はとっても危険!

締め切り間際にならないと、力が発揮できない。

ある心理学者によると、こういう 「危機好き」 というタイプは一定数いるとのことで、仕事をためにため込んでしまうのも「性格」ならば仕方がない、と思われるかもしれません。

ただ、「性格」というのはしばしば、習慣の別名であったりもします。「何かといえば同僚や上司の悪口を言っている」というのは、悪い習慣でしょうか、それとも性格でしょうか。心理学の専門家でもこの2つをきっちり分けられるわけではなく、考え方次第というところもあります。同じような行動を取るのが「癖(くせ)」になっているとも考えられるし、そういう性格だからそういう行動を繰り返してしまうのかもしれません。

しかしどちらにしても、好ましくない「悪習」を改善できるならそうしたほうがいいでしょうし、「性格だから仕方がない」といっても、変更ができるならそうしたほうが、本人にとってもメリットがあるはずです。

締め切り間際にならないと「本気が出せない」というのも、そういう性格なのかもしれません。しかし、もう少しましな計画を立てて、毎日少しずつ「本気を出す」習慣に切り替えることができないとも限らないのです。できるのならば、そうしたほうがいいのは言うまでもないはずです。

 

「危機を乗り切ったドラマ」の良い面と悪い面

危機好きタイプの人はつまり、強い危機感と、それを乗り切ったという強烈な成功体験だけが、仕事のモチベーションになっているタイプです。

夏休みも終わり間際になって、急激に不安に襲われて、3~4日で膨大な宿題をイッキにこなした「成功体験」が忘れられないのかもしれません。

ここには2つの心理があります。

まず、迫りくる締め切りが間際にならないと、あまりリアリティを感じないという感覚。あと「3日」くらいになって初めて締め切りにリアリティを感じて、急激に不安感が募るのですが、それまでは割と安穏としていられるわけです。

そして、危機的状況を乗り切ったという成功体験の記憶。これはヒロイックなストーリーで彩られているかもしれません。仕事をやる。宿題を終わらせるといっても、人それぞれの動機づけは違うでしょう。「俺はたった3日であの膨大な仕事を終わらせたのだ!」という体験が、ポジティブなストーリーとして記憶に刻まれている人がいても不思議はありません。

もちろんこれにはネガティブな側面もつきものです。

宿題にしても、雑な字でひたすら白紙を埋めただけかもしれませんし、仕事にしても、やらなくて良さそうだと判断したところはとことん手を抜いた、あるいは、やらなければいけないところも可能な限りごまかしたのかもしれません。

それでもやっと終わったというだけか、本当は終わってすらおらず、関係者に多大な迷惑をかけた末、何とか致命的な状況は避けられただけかもしれないのです。

おそらく危機好きなタイプというのは、この種の成功体験の良い面を拡大し、悪い面は忘れています。過去の危機を「忘れている」と言えば、言いすぎかもしれませんが、ものすごく過小評価している可能性が高いのです。

危機的な状況に格闘するのは、ドラマチックかもしれません。しかしそれは、意味のないドラマにすぎません。何より、曲がりなりにも「成功」していれば良いでしょうが、本当に致命的な結末に至るリスクがあります。ドラマを演出するために「仕事をためる」というのは、割に合わないと考え直す必要がありそうです。

 

次の記事「「ロボット」になれば仕事の効率は格段に上がる/仕事の渋滞は「心理学」で解決できる(7)」はこちら。

佐々木正悟(ささき・しょうご)

心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。専門は認知心理学。1973年北海道旭川市生まれ。97年獨協大学卒業後、ドコモサービスで働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。帰国後は「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)の他に『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(KADOKAWA)、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)など。また、共著に『iPhone情報整理術』(技術評論社)がある。

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『仕事の渋滞は「心理学」で解決できる』
(佐々木正悟/KADOKAWA)


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この記事は『仕事の渋滞は「心理学」で解決できる』からの抜粋です

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