"ますらお"には「強く堂々とした、立派な男子」の意味があります。筆者である元・陸上自衛官のぱやぱやくんは、自衛隊の教育機関にいた頃、「ますらお至上主義者」と出会い、感じました。まさに「陸上自衛隊=ますらお」であると! 恋愛模様や気合いの洗濯など、普段はなかなか知ることのできない陸上自衛官のリアルを赤裸々に描いた『陸上自衛隊ますらお日記』(KADOKAWA)。ますらお達の愛とユーモアに溢れた世界をのぞいてみませんか?
※本記事はぱやぱやくん著の書籍『陸上自衛隊ますらお日記』から一部抜粋・編集しました。
【前回】洗濯を甘くみてはいけない! 自衛隊員にとっては気の抜けない戦場なのだから.../ますらお日記
恐ろしいカレーライスおばけに気を付けろ!
続いて、ますらおの「食」にも迫っていきましょう。
駐屯地の食堂は小さな体育館のような建物の形で、巨大な社員食堂という佇まいです。
彼らにとって食堂は朝昼晩の3食を食べられるパワースポットであり、「今日のご飯はなんだろう?」と毎日待ちわびています。
ますらお達は基本的にお腹が空いているので、食堂の扉が開くとともに雪崩れ込みます(多頭飼いしているネコみたいで可愛いですね)。
ますらおの1日におけるビッグイベントは、なんといっても昼食。
昼食が最もカロリーが高く、豪華な内容となっているからです。
ハンバーグ、ミックスフライ、カレーライスとますらおの胃袋が喜ぶラインナップが並び、カツカレーなどが出るときは「来週の火曜日はカツカレー......」と休日から楽しみにしている人達もいます。
わんぱくな小学生のようですが、ますらおもわんぱくボーイなので仕方ありません。
カレーライスの日は「ご飯やルーは適量を守ってください!」という張り紙が掲示されたり、食堂のおばちゃんによる食膳が行われたりすることがあります。
このような対応をしないと、「カレーライスなら無限に食べられる」と豪語する若手隊員に全てを食べられてしまいます。
そんな「カレーライスおばけ」が東京湾に浮かぶクラゲのように大量発生すると、遅い時間に食堂に来たますらおが「おい! カレーライスがないじゃないか!?」と憤怒します。
そうしたことを防ぐために、カレーライスの日は秩序を守る必要があるのです。
なお、海上自衛隊は「金曜日=カレーライス」という伝統がありますが、陸上自衛隊には特にありません。
不定期で登場することが多いです。
また人気メニューの日には、食堂の扉の前に隊員達が列をなして並び、イベントがあるパチンコ屋の開店前みたいな雰囲気を醸し出します。
「食堂が開く前の高揚感がたまらない」と語る人もおり、一種のイベントといっても過言ではないでしょう。
早食いRTA技を身につけろ
幹部候補生学校や陸曹教育隊などの"修行の場"にいるますらお達は、「1日の自由時間が30分しかない」といった生活をしているので、昼食を早く食べられるかどうかが大きなポイントになります。
彼らはとにかく時間がないので、食堂の列に並びながら「いいか、汁物はご飯にぶっかけてかき込め、おかずは口に入るだけ突っ込め、ヨーグルトは持って帰れ、3分で終わらすぞ」とハリウッド映画のエージェントみたいな会話をしています。
そして「いただきます」といった瞬間に「ご飯タイムトライアル」を行い、怒涛のごとく食べてしまいます。
こうすることで食べるスピードがどんどん上がり、一般社会では考えられないスピードで食べることができるようになります。
ただ倍速で食べることを覚えると、一般社会に戻ったときに苦労します。
自衛隊の食事がF1レースだとすれば、一般社会の食事は軽トラックのレースなので、チューニングするのが辛くなってしまうのです。
ますらお達は甘~いスイーツが大好き
実は、ますらおは甘いものが大好きです。
特に人気が高いのは洋菓子で、バレンタインデーや誕生日にケーキやチョコレートを提供されると、むしゃぶりつきます。
また、外部業者のお菓子屋さんが駐屯地に来ることもあり、その日は「おい! 今日はシュークリームのおじさんが来ているぞ!」と駐屯地中が色めき立ちます。
基本ますらおは甘いものに飢えているので怒涛のごとく買い占めるのですが、ここでは特にシュークリームとエクレアが人気です。
なぜなら、「ケーキは皿とフォークを準備するのが面倒くさい」という理由があるからです。
陸上自衛官と親密な仲になりたい方は、「素手で食べることができるスイーツ」をプレゼントすればいいでしょう。