"ますらお"には「強く堂々とした、立派な男子」の意味があります。筆者である元・陸上自衛官のぱやぱやくんは、自衛隊の教育機関にいた頃、「ますらお至上主義者」と出会い、感じました。まさに「陸上自衛隊=ますらお」であると! 恋愛模様や気合いの洗濯など、普段はなかなか知ることのできない陸上自衛官のリアルを赤裸々に描いた『陸上自衛隊ますらお日記』(KADOKAWA)。ますらお達の愛とユーモアに溢れた世界をのぞいてみませんか?
「自衛隊員はモテない」と断言するぱやぱやくん。しかし、異性との出会いがゼロというわけではありません。自衛隊員に訪れる、数少ない恋のチャンスとは。
※本記事はぱやぱやくん著の書籍『陸上自衛隊ますらお日記』から一部抜粋・編集しました。
【前回】自衛隊員同士の恋愛事情。危険な罠が潜み...禁断の果実に手を出してはいけない!?/ますらお日記
紳士なのは最初だけ。恐怖の身内トークが炸裂する合コン
では、男性自衛官はどこで恋人を作るのかといえば、合コンです。
出会いがないと言いつつも大抵は部隊に一人はプレイボーイがいるので、合コンはよく設定されます。
ただ、合コンに参加をしても、上手くいかないことも多いです。
というのも、最初は女性に気を使う紳士らしさを見せ、良い感じで会は進んでいくのですが、中盤になり「外出できる喜び」「酒を飲める喜び」に浸ってくると段々と「自衛隊のキツかった話」に話題が移行していくからです。
この話題になると、一般の女性は最初のほうは乗ってくれます。
「すごいですね!」「匍匐前進できますか!?」と。
そうするとさらに気分が良くなり、酔いが回ってきたますらおは、「行軍で足がズルむけになっても痛みは電気信号に過ぎないから大丈夫」「4夜5日風呂に入らなかったらデリケートゾーンが痒くなった」などと救いようがない話を段々と始めるようになります。
この段階で主催者のプレイボーイをふと見てみると、愛想笑いしつつも、一番可愛い子と親密な雰囲気を醸し出していることが常です。
その雰囲気を見た哀れなソルジャー達は、「もう楽しく飲めればいいか!?」と良からぬますらおシンキングに移行し、今まで見たレジェンド自衛官の話や演習中に起きたミラクル話を炸裂し、ただの飲み会になります。
この段階でもう女の子は白けて、葬式のようになりがちです。
ただ、稀に「私も登山で足裏がズルむけになったけど気合いで乗り切ったよ」や「私もへび食べてみたいなぁ~」という謎の女性が現れるので、そういった女性は陸上自衛官と気が合い、付き合いを進めることになります。
「私のためにレンジャーになって!」謎の無茶ぶりをする自衛隊ファンの女性達
また、自衛隊OB会などによく顔を出す自衛隊ファンの民間女性なども紹介してもらえることがありますが、彼女らにはいわゆる「自衛隊ガチ勢」が混ざっていることがあり、そうした人と出会うと会話が濃厚です。
各地域での災害派遣の実績などもなぜか知っており、自衛官以上に自衛隊のことを知っていることがあります。
ただ、ますらお信仰を持ち合わせていることもあり、「結婚するならその前にレンジャー訓練に行って欲しい」などとよく分からない無茶ぶりをすることもあります(ここは辛くても愛のパワーで乗り切りましょう。実際にレンジャー訓練が終わった後にそのままプロポーズする人もいます)。
恋人ができても、会いたくても会えなくて震える
運良く彼女ができたとしても試練は続きます。
それは「なかなか会えない」という問題です。
土日に演習や訓練が設定されることが度々あり、長期訓練の場合は数週間会えないこともざらにあります。
土日が休みであっても、営内で生活をしている若手隊員は、前のパートで出てきた「残留要員」として駐屯地に残る場合があります。
そうした生活をしていると恋人が「そんなに会えないならもういい!」と言って、違う人に目移りをしてしまうこともあります。
そのような事態にならないように、ますらお達は恋人に電話をしたり、メッセージを送ったりと涙ぐましい努力を欠かせません。
実際、私も同期を見て「売店で買ったシュークリームの写真をわざわざ送ってどうするのよ......」と思ったこともありますが、それが彼らの愛情表現なのです。
彼らから携帯電話を没収すると「かのぴっぴと連絡できない!」と連絡手段がなくなった離島の島民のようにソワソワするようになります。
それほど恋人を繋ぎ止めておくのは彼らにとって死活問題なのです。