「働きながら介護」に直面する前に。『介護白書2025』が示す世代別の備え方

915日は社会に尽くしてきた高齢者を敬愛し、長寿を祝う「敬老の日」でした。人生100年時代といわれる昨今、日本の超高齢社会において「介護」は避けて通れないテーマです。「介護の経験はまだない」「介護問題は先の話」という方も多いかもしれません。しかし、早くから準備することで介護との向き合い方がガラリと変わるという調査結果が出ました。ダスキン ヘルスレントが発表した「介護白書2025」から、介護に関する世代間の意識や、時間とともに変化していく価値観を読み解きます。

「働きながら介護」に直面する前に。『介護白書2025』が示す世代別の備え方 pixta_94882580_S.jpg

「まだ介護の準備をしていない人」が約7割という現実

ダスキン ヘルスレントの調査によると、介護を経験したことがない働く男女840人に「将来、自分が介護をすることになると思うか」と聞いたところ、「介護をすることになると予想している」と答えた人は66.4%(558人)でした。さらに将来の介護に向けた準備について尋ねたところ、72.9%が「何も準備していない」という結果でした。

また、先ほど「介護をすることになると予想している」と答えた558人に、介護に対する不安度を0100%の数値で示してもらうと、平均72.7%という結果に。特に30代、40代の女性は不安度の数値が高い傾向がありました。

「不安」の原因を紐解いていくと「仕事と介護の両立」が見えてきます。特に男性よりも女性のほうが不安に感じている割合が高く、「どれくらいに介護に時間を割く必要があるのか」「介護制度や支援の情報が理解できていない」など、事前の準備不足が起因しているようです。

調査から読み取れるのは、4人に3人は何の準備もしないまま突然、介護生活がスタートするということ。そして「このままでは不安だけど何も準備していない」のが実情のようです。

「働きながら介護」に直面する前に。『介護白書2025』が示す世代別の備え方 03_介護に備えた準備をしてる?.png

※ダスキン ヘルスレント「介護白書2025」より抜粋

「働きながら介護」に直面する前に。『介護白書2025』が示す世代別の備え方 Q3-2.「特に何も準備していない」と回答した人(年齢別).png

※ダスキン ヘルスレント「介護白書2025」より抜粋

「働きながら介護」に直面する前に。『介護白書2025』が示す世代別の備え方 01_将来の介護に対する不安度は・・・.png

※ダスキン ヘルスレント「介護白書2025」より抜粋

「働きながら介護」に直面する前に。『介護白書2025』が示す世代別の備え方 Q9.仕事と介護の両立に不安を感じる理由.png

※ダスキン ヘルスレント「介護白書2025」より抜粋

介護を経験すると介護に対する考え方が変わる

親または子と離れて暮らす2,000人(親世代1,000人、子世代1,000人)にも介護に関する調査が行われました。介護のイメージについて聞くと、「精神的な負担が大きい」70.0%(前年69.5%)を筆頭に、「肉体的な負担が大きい」63.6%(前年63.5%)、「重荷に感じる」47.9%(前年47.1%)などネガティブな回答が多く、前年調査とほぼ同様の傾向が見られました。

一方、介護経験がある親世代では、また違った傾向が見られます。介護は「親孝行」や「恩返し」と捉える向きがあり、調査におけるポジティブな数字も介護未経験の方々に比べて軒並み高くなっています。これらの結果から、介護を経験することで、介護に対してポジティブなイメージが強まる傾向があることがわかりました。

「働きながら介護」に直面する前に。『介護白書2025』が示す世代別の備え方 Q15.一般的な「介護」のイメージ上位10項目.png

※ダスキン ヘルスレント「介護白書2025」より抜粋

「働きながら介護」に直面する前に。『介護白書2025』が示す世代別の備え方 Q16.介護経験別 「介護」のイメージ(介護経験有無)での比較.png

※ダスキン ヘルスレント「介護白書2025」より抜粋

外部サービスを検討することで介護のイメージがさらに変わる

介護経験がある親世代・子世代1,000人に、介護経験の前後での考え方の変化を聞いたところ、介護に対する意識が大きく変化していることがわかりました。これまでは「自分たちでやらないと」と抱え込む世代が多かったようです。しかし介護を経験することで、介護に必要な時間や役立つ制度のことがわかり、外部の支援を前向きに捉える傾向が強まっています。つまり、自分や夫婦ですべて解決しようとするのではなく、介護のプロや外部サービスに頼ろうとする意識が芽生えるようです。

NPO法人となりのかいごの代表理事・川内 潤氏は、「介護を経験すると、介護に対する考え方が自然と変化していく方が多くいます」といいます。

「介護を経験することで、プロに頼ると安心や外部サービスは利用するべきといった考え方へ自然と変化していく方が多くいます。介護のプロに相談することで、他人に任せることの罪悪感は次第に薄れ、『自分ができないから』ではなく『そのほうが良い結果につながるから任せる』という前向きなスタンスに変わっていくのです」(川内 潤氏)

「働きながら介護」に直面する前に。『介護白書2025』が示す世代別の備え方 Q17.介護経験者に聞く、介護経験前と後での介護に対する考え方の変化.png

※ダスキン ヘルスレント「介護白書2025」より抜粋

介護をアウトソーシングすることで時間にも余裕が生まれます。すると、「仕事と介護の両立」も前向きに捉えられるようです。ちなみに、仕事と介護の両立を経験した人に「仕事で役立つスキルは仕事と介護の両立に役立つか」という質問に対しては、72.3%が「仕事と介護の両立に役立つ」(とてもそう思う+そう思う)と答えています。

特に多かったのがコミュニケーション力や共感力の項目です。この点について、川内 潤氏は「ビジネススキルを活用すると、介護の質が高まる」と説明します。

「介護も仕事と同様、いろいろな人たちとチームになって推進していくわけですが、ケアマネジャーさんや介護士さんなど介護のプロの方々とどうコミュニケーションをとり、どう共感していくかが重要です。仕事で取引先や社内の人と接する時、相手の立場や仕事内容を考えてコミュニケーションをとりますよね。それと同じように、介護職の人たちがどうすればより良い仕事ができるようになるのか、彼らへの共感力を持ってコミュニケーションしてもらうと、彼らのモチベーションはぐっと上がり、質の高い介護につながります」(川内 潤氏)

「働きながら介護」に直面する前に。『介護白書2025』が示す世代別の備え方 02_介護で役立つスキルTOP5.png

※ダスキン ヘルスレント「介護白書2025」より抜粋

早くから準備することで介護の不安は軽減できる

介護に対するネガティブなイメージは根強いものの、介護経験を通じてポジティブな側面に気づき、外部サービスを積極的に活用する意識が広まっています。これからの介護は、家族だけで問題を抱え込むのではなく、アウトソーシングを検討することで、仕事と介護の両立がしやすくなり、肉体的にも精神的にも負担の軽減につながるようです。まずは「介護は先の話」と考えるのではなく、早くから準備やイメージをしておくことはポイントになりそうです。動き出すことが、不安を取り除く近道なのかもしれません。

 

 

 

 

この記事に関連する「暮らし」のキーワード

PAGE TOP