外資系企業役員の口癖は「簡単な図にできないかな?」/2軸思考

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「頭の中がごちゃごちゃで、仕事が前に進まない」「次から次へと問題が起こってスケジュールが遅延している」...こうした複雑な問題を一瞬でシンプルにしたいなら、紙に、2本の線を引いてみてください。

本書『2軸思考』で、あらゆる問題をタテとヨコの2軸で整理して考える方法を学び、最速の時間で最大の成果をあげていきましょう! 今回はその10回目です。

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前の記事「世の中の「構造」が2軸で瞬時に浮かび上がる/2軸思考(9)」はこちら。

 

トラブルプロジェクトを一瞬で変えた1枚の図

私がいまでも「2軸思考の原点」だと感じている出来事があります。
30代の頃、とあるトラブルプロジェクトに「いまから行ってこい!」と言われて急遽放り込まれたときのことです。

私たち追加メンバーは、現場についてすぐにプロジェクトマネジャーからいま起きている問題について説明を受けました。
このときの私の正直な感想は「ヤバいぞ」でした。トラブルの種類もかなり多岐にわたっており、さらにスケジュールの遅延も起きていて現場が混乱。数人が応援に来たくらいでは収束は不可能なように思えたからです。まさに「応援に来たものの、どこから手をつけていいのかわからない状態」でした。

ところが、私と一緒にプロジェクトに加わった先輩が、翌朝のミーティングでパワーポイントにまとめた1枚の図を皆の前に提示しました。

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あれほど混乱していた状況について、「これが解決へのロードマップです」とゴールを示したのです。しかも、私にとってあの「混沌」としか表現できなかった状況がとてもシンプルにタテ軸とヨコ軸でまとめられていました。

先輩が示した「たった1枚の図」によってトラブルプロジェクトは進むべき道が明確になり、一気に解決に向けて動き出しました。「何をすべきか」が明らかになったため、混乱していたメンバーたちも作業が進むようになりました。スケジュールの遅延もいつまでにリカバリーすべきかが「見える化」され、クライアントに説明できるようになりました。「ヤバい」という感想しか持てなかった私は、この図に強い衝撃を受けました。「複雑なことをシンプルに整理する」ことの圧倒的なパワーを実感したのです。


外資系の口ぐせ「簡単な図にできないかな?」

この強烈な経験以降、私は仕事ができる人ほど肝心な場面でシンプルな「図」を書き、人を動かしていることに気づきました。

私が所属する外資系企業でも、役員が参加する会議では「その状況、簡単な図にできないかな?」「簡単な図で整理するとこうだよね」という会話がよく交わされています。そして優秀な人ほど、アウトプットで出てくる図は極めてシンプルなのです。

 

有名なフレームワークも、2軸にすると「使える」ようになる

有名な「PDCA」や「3C」などのフレームワークも、実は2軸に作り直すことで現場で「使える」形に変えることができます。私たちが慣れ親しんでいる「PDCA」。超有名なフレームワークで、新人のときから教育を受けることも多いものです。

しかし残念なことに、実際にPDCAを実践しながら仕事をしている人はそれほど多くはありません。それはなぜか?

PDCAが図1-3の最初にあるように、サークル状のフレームワークになっているからです。

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PDCAを「回す」というイメージが図になっているので、「C」で何をチェックするのかが曖昧です。そこでサークル状のフレームワークを2軸に書き換えてみます。「P」(計画)と、「D」(行動)のそれぞれに対して「C」(チェック)をして、そのチェックの結果、それぞれに対して「A」(アクション)を決めるのです。

「3C」も同様です。図1-3の真ん中のように3つの要素を三角形で表したままでは、なんとなく相互の関係をイメージすることはできますが、3つのCについて具体的に考えようとすると曖昧になってしまいます。

これを2軸のタテ軸に設定し、ヨコ軸を5W1H(いつ、どこで、誰が、なぜ、何を、どうやって)にすると、自社と顧客、競合をリサーチするときに使えます。

2軸思考のいいところは、タテとヨコに2本の線を引くことで、「空いた枠」が作り出されること。人は、枠ができると埋めたくなるものです。このスペースに頭の中のことを「書き出す」ことでシンプルに整理することができ、新たな発見ができるのです。

 

次の記事「2軸思考を使うと、考えるのも伝えるのも早くなる/2軸思考(11)」はこちら。

木部 智之(きべ・ともゆき)

日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー。横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBMにシステム・エンジニアとして入社。入社3年目にしてプロジェクト・マネジャーを経験。その後、2006年のプロジェクトでフィリピン人メンバーと一緒に仕事をする機会を得る。2009年に役員のスタッフ職を経験し、2010年には 最大級の大規模システム開発プロジェクトにアサインされ、中国の大連への赴任も経験。日本と大連で500人以上のチームをリードしてきた。プロジェクト内で自分のチームメンバーを育成するためにビジネススキル講座を始め、そのコンテンツは社内でも評判となった。著書に『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』(KADOKAWA)がある。

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『2軸思考』
(木部智之/KADOKAWA)


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