「頭の中がごちゃごちゃで、仕事が前に進まない」「次から次へと問題が起こってスケジュールが遅延している」...こうした複雑な問題を一瞬でシンプルにしたいなら、紙に、2本の線を引いてみてください。
本書『2軸思考』で、あらゆる問題をタテとヨコの2軸で整理して考える方法を学び、最速の時間で最大の成果をあげていきましょう!
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前の記事「30個の問題を抱えていても「枠」さえ作れば解決できる/2軸思考(5)」はこちら。
全体像を捉える
フルマラソンを走ろうとするとき、最初の1キロを全速力で走ろうとする人はいませんよね。なぜかというと、目の前にある1キロが42.195キロのうちの「最初の1キロ」だとわかっているからです。逆に、目の前の1キロが「最後の1キロ」であれば、残っている自分のすべての力を振り絞って全力で走り切ると思います。
大切なことは、自分の目の前の1キロが、
・最初の1キロなのか
・中盤の1キロなのか
・最後の1キロなのかを知ること。
そのために必要なのが「全体像を捉える」ことなのです。
仕事もまったく同じです。
よく、「あの人は重箱の隅ばかりつつくよね」などと言われることがあります。全体のバランスを考えず、些末なことばかりにとらわれていることを揶揄する言葉です。
では、そのような人たちはなぜ重箱の隅をつついてしまうのでしょう?
答えは明らかで、そこが「重箱の隅」であることに気づいていないからです。重箱の全体像がわかっていなければ、自分がつついているところが隅なのか真ん中なのか、把握することができません。
仕事の細部にこだわりすぎて本質を見失うと、必ずヌケやモレが発生します。たとえば、作成している資料のデザインに凝りすぎて、最も重要なコンテンツが抜け落ちてしまう、など......。その結果、自分自身は一生懸命やっているにもかかわらず、「あの人は仕事ができない」という評価になってしまうのです。
仕事をする上で大切なのは、まず、全体を把握すること。そして、その中から重要度を見極めることです。最初に仕事の全体像を押さえた上で到達すべきゴールを決め、そこから逆算して手段や到達方法を考える。それからようやく「さあ、仕事に着手!」という流れが理想なのです。
どんな仕事でも、使える時間とカネは限られています。どんなにいいアイデアが100個出たとしても、その100個のアイデアを全部実行することはできません。実行するときは、限られた時間とカネで実行できる10個に絞る必要が出てきます。何を実行し、何を捨てるのか。取捨選択をするためには、全体感がわからないと適切な判断ができないのです。
上司は全体像を知りたがっている
私が若手の頃、会議などで上司からしばしば「いま話しているものの総量はいくつなの?」「全体がわからないと判断できないな」と指摘されました。当時は「なぜそんなことをいちいち確認するのか?」と理解できなかったのですが、自分がリーダーとして大きなチームを率いるいまとなっては、その意味がわかるようになりました。
私自身、メンバーから「今週は、他のものを後回しにしてこのタスクに注力したいです」と相談されても、そのタスクがどれくらい重要なのか、いま本当にそのタスクに注力しないといけないのか、他のことも含めた全体像がわからないとOKもNGも出せません。
また、ときおりメンバーに「あの資料、いつまでに作る予定?」と聞くと、「すみません!急いで明日出します!」と焦って答えてくる人がいて、「別に急いでいるわけじゃないんだけどな」と思うことがあります。
こちらが求めているのはスケジュールの全体像。たとえば、「2週間後に完成予定で進めています。いま3日目で、だいたいの構成が出来上がりましたので、週明けくらいには一度ラフな状態で確認いただく予定です」と答えてもらえると順調かどうかがだいたいわかり、今後のチェックポイントや自分の空けておくべきスケジュールを考えることができるのです。
次の記事「考えるべき問題は「ぬり絵」で把握する/2軸思考(7)」はこちら。
木部 智之(きべ・ともゆき)
日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー。横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBMにシステム・エンジニアとして入社。入社3年目にしてプロジェクト・マネジャーを経験。その後、2006年のプロジェクトでフィリピン人メンバーと一緒に仕事をする機会を得る。2009年に役員のスタッフ職を経験し、2010年には 最大級の大規模システム開発プロジェクトにアサインされ、中国の大連への赴任も経験。日本と大連で500人以上のチームをリードしてきた。プロジェクト内で自分のチームメンバーを育成するためにビジネススキル講座を始め、そのコンテンツは社内でも評判となった。著書に『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』(KADOKAWA)がある。
『2軸思考』
(木部智之/KADOKAWA)
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