「頭の中がごちゃごちゃで、仕事が前に進まない」「次から次へと問題が起こってスケジュールが遅延している」...こうした複雑な問題を一瞬でシンプルにしたいなら、紙に、2本の線を引いてみてください。
本書『2軸思考』で、あらゆる問題をタテとヨコの2軸で整理して考える方法を学び、最速の時間で最大の成果をあげていきましょう! 今回はその18回目です。
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前の記事「変化を捉える「グラフ」タイプの作り方/2軸思考(17)」はこちら。
2軸フレームワークを作るときのポイント
ここまで、3つの2軸タイプごとにフレームワークを作るステップを説明してきました。いよいよ実際に2軸フレームワークを作るわけですが、5つの気をつけるべきポイントがあります。
[ポイント 1] 手書きで思考する
「考える」という行為は頭の中で行うものですが、人は頭の中だけではそれほど多くの情報を処理することができません。頭の中だけで考えていることは結構ぼんやりしています。そして、考えたことは次から次へと忘却の彼方へと去っていってしまいます。
たとえば、朝の通勤電車の中で新しい企画を考えていたらふといいアイデアを思いついたが、会社に着いたらそれがどんなアイデアだったのかが思い出せない......。そんな経験をしたことが、みなさんにもあるのではないでしょうか。
2軸思考は思考プロセス、つまり考え方の方法論なので、極論、頭の中だけで進めることは可能です。しかし、取り扱う対象が大きくなり、複雑になればなるほど、頭の中だけで完結することが難しくなってきます。2軸で考えるときは、「紙に書き出す」ことでより良い思考をすることができるようになります。
紙に書き出して頭の中が「見える化」されると、その情報をきっかけに新しいアイデアが浮かびやすくなります。また、見える化されることで論理破綻や考慮のモレに気づきやすくなります。
2軸思考をするときは、エクセルやパワーポイントなどのデジタル環境で整理するのではなく、ノートや紙などに「手書き」することをおすすめします。パソコンなどのデジタル環境だと、きれいな表やグラフにするといった見た目に意識が行きがちなことが理由のひとつです。
また、手書きをすると考えている内容が頭に染み入り、記憶に残りやすくなります。
学生時代に漢字や英単語、数学の公式などを暗記するときは、何回も何回も手で書いて覚えたのではないでしょうか。逆に、社会人になってパソコンを使うようになってから、「読めるけど書けない漢字」が増えたという人は少なくないと思います。
手で書くことと頭で考えること、記憶に残ることには密接な関係があると思われます。私は脳医学や神経学の専門家ではないので学術的なことはわかりませんが、経験論として、手で書きながら考えるほうがはるかに効果的で効率的です。
数々の素晴らしいプレゼンをしてきたあのスティーブ・ジョブズも、プレゼンの準備をするときは紙やホワイトボードでアイデアを出し、構成を考え、練りに練って、最後の最後にパソコンできれいなチャートを作っていたそうです。
この時代にアナログなアプローチと思われがちですが、人間はもともとアナログな生き物です。私の実体験から、手書きでアナログに考えることを強くおすすめします。
次の記事「どんな複雑な事象も力ずくで「2軸」に整理する/2軸思考(19)」はこちら。
木部 智之(きべ・ともゆき)
日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー。横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBMにシステム・エンジニアとして入社。入社3年目にしてプロジェクト・マネジャーを経験。その後、2006年のプロジェクトでフィリピン人メンバーと一緒に仕事をする機会を得る。2009年に役員のスタッフ職を経験し、2010年には 最大級の大規模システム開発プロジェクトにアサインされ、中国の大連への赴任も経験。日本と大連で500人以上のチームをリードしてきた。プロジェクト内で自分のチームメンバーを育成するためにビジネススキル講座を始め、そのコンテンツは社内でも評判となった。著書に『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』(KADOKAWA)がある。
『2軸思考』
(木部智之/KADOKAWA)
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