『セレブのカバンはなぜ小さいのか お金と幸せの秘密ルール』 （桜井美帆／KADOKAWA）第2回【全7回】
ハッピーマネー小説『セレブのカバンはなぜ小さいのか お金と幸せの秘密ルール』（KADOKAWA）の主人公のジュンは、仕事も恋もうまくいかず、夜ごと、お酒を飲みながら人生を嘆く派遣社員。「貧乏・不幸マインド」に支配され、自分自身の可能性を信じられない女性です。物語はジュンが行きつけのバーで、謎の大富豪メディチーナさんと偶然出会ったことで、大きく転換しはじめます。彼女は幸せなお金持ちになれるのでしょうか？ スピリチュアルな内容だけにとどまらず、セレブの振る舞いや資産運用にまで踏み込んだこの小説から一節を抜粋しご紹介します。
※本記事は桜井美帆著の書籍「セレブのカバンはなぜ小さいのか お金と幸せの秘密ルール」から一部抜粋・編集しました。
こんな夜になんの用？ 仕事の電話なら昼間にするよね？ なんだろう？
怖い。嫌な予感。何を言われるんだろう？ もう電話は出ない！
結局、その着信は出ずに、連絡を無視した形になってしまった。
「はぁーーー」
カウンターテーブルに頬をつけて、深いため息をついた。
「あ～、私に残されたのは、クレジットカードのローン50万円かぁ。愛も夢もお金も仕事も貯金も何もない。全部、私の前から消えちゃった。この８年間、一体、何をしてきたんだろう？ もう、やり直す気力なんて出ない」
落ち込んでうなだれていると、カウンターテーブルの奥に新しいお客様が来店して、小さなブランドもののバッグが目に飛び込んできた。
「高そうなバッグ...。でも、なんであんなに小さいのよ。あれじゃ、何も入らないじゃない...」
どんな人がそれを持っているのか？ と持ち主の顔を見てみると、
「ふん。セレブな人か...」
なぜ、あの人は、私にないものを全て持ち合わせているのだろう？ にこやかで美しい所作は、不思議と目が離せない。私は気づいたらじっと彼女を見つめていた。
「私も、ああなりたい。本当だったら今頃はああなっていたはずなのに」
きっと年上だろうけど、私よりもお肌の艶もあって、若々しい雰囲気で、何より上品で気品がある。身に着けている時計や小物、ファッションも質の良さそうなものばかりで、明らかに私とは生活レベルが違うとわかった。
「マスター、あの人、誰？ 知っていますか？」
「あー。彼女はメディチーナさんといって、たまにウチに顔を出してくれるお客様。紹介しようか？ パワーもらって元気になってよ」
そう言って、マスターが奥まで席を移動するように合図してくれて、メディチーナさんとやらにも声をかけてくれた。
「いつもありがとうございます。今日も輝いていますね」
「いえいえ」
「こちら、ジュンさん。家も近かったと思ったので、よかったら彼女に元気パワーあげてください」
私を見ると優しくニコッとほほ笑み、乾杯とグラスを差し出してきた。
「ジュン、メディチーナさんはロイヤルマンションのペントハウス住まいだぞ。もう天上界の人だから、失礼のないように話すんだぞ！ 愚痴るなよ」
「え？」
私は肩をすくめて、何を話していいのかもわからなくなった。私とは別世界の人。話なんて合うわけもない。でも酔った勢いでズバリ聞いた。
「あ、あの、ど、どうしたら、メディチーナさんのような素敵な女性になれますか？」
メディチーナさんは、手に持っていたグラスを置き、真っ直ぐ私の目を見て伝えてくれた。
「ジュンさんも充分に素敵な女性ですよ。それでも知りたい？ 魔法の秘密があるの」
「魔法の秘密？」
「そう、引き寄せの法則は聞いたことあるかしら？ 今、不幸でも、不運でも大丈夫。魔法と言ったけど、実は科学だから、ルールを守れば誰でも人生は変えられるの。一番どん底のときこそ、この秘密を知るチャンスよ」
「そ、そうなんですね？ で、でも、私、かなり、ダメダメなんです。そんな私でもできますか？」
「大丈夫。私でもできたから。昔は、私も不幸で不運でダメダメだったのよ」
私は、その一言が衝撃でイスから落ちそうになった。その瞬間、人生で初めて一撃で何かが変わる体験をしたような気がした。
自分に雷が落ちて、電流が走ったように痺れたからだ。メディチーナさんから過去の不幸で不運な人生の姿も映し出されたような気がした。
メディチーナさんは、スマホで昔の自分の写真を見せてくれた。
「見て。これが昔の私。ね？ 病弱で生きるのが苦しかったの」
その写真を見て、メディチーナさんも元からセレブではなかったんだということがわかって少し親近感がわいた。
【ルール】人生のどん底は引き寄せの魔法の秘密を知るチャンス
