酒井宏樹「自己主張の強くない僕が、自分の意思を相手に伝える方法」/リセットする力

24051830.jpgフランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、サッカーワールドカップロシア大会での活躍が期待されるサッカー選手、酒井宏樹。しかし彼は「弱気」で「人見知り」という性格の持ち主だった...。
サッカー選手に不向きなその性格をいかにして克服してきたのか? 本書『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』で、その具体的な方法を探っていきましょう。

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前の記事「酒井宏樹「結局、ラクな選択肢に成長はない」/リセットする力(15)」はこちら。

 

アプローチの方法を工夫すれば何とかなる

「酒井は謙虚だ」と周りの人からよく言われます。
でもそれは、「ただ単に素直に人にものを言えない性格だ」と自分では分析しています。僕は自分のプレーが試合を決定づけるという感覚もあまりなく、みんなに助けられているとしか思っていません。だから助けてくれる仲間に対して文句を言えるはずはないし、プレー中にフォローしてくれたチームメートに感謝の気持ちを持つのは当然のことだと思っています。

一般的に、スポーツ選手は自己主張の強い人が成功すると思われがちですが、自己主張の強くない僕は、自分の要求を伝えたいときでも回り道をして、自分を抑えて、まずは向こうの要求を聞き、それを聞いたうえで、自分の要求を伝えるようにして、ここまでやってきました。

同じサイドで組むアタッカーには、自分本位なぐらい僕に要求してきてほしいと思っています。そうすれば「じゃあ僕はこう動くんで」と、その人の動きに合わせて動き方が決まるからです。だから(本田)圭佑くんとはすごくやりやすいし、柏レイソル時代にコンビを組んでいたレアンドロは自分本位すぎました(笑)。そんなレアンドロに比べればマルセイユのチームメートであるフランス代表のフロリアンは、もう少し僕の意見に聞く耳を持ってくれています。

僕は自分を抑えることがストレスにはなりません。根本的に自分に自信がなく、もともと「僕の要求がどれくらい伝わるだろうか......」という不安な気持ちがあるため、相手が自分の要求に100%は応えてくれなくても、自分の要求が30%でも40%でも伝われば、「相手に伝わった」「歩み寄れた」という達成感があります。初めは30%や40%しか伝わっていなくても、それだけ伝わっていれば、あとは自分のアプローチの仕方を工夫して、その数字を引き上げていけばいいだけです。

 

気弱でも自分の意思を伝えることはできる

「強い人間に生まれ変わるために、多少強引にでも自分の要求をガンガン押し通せるようになろう」という話も聞きますが、気弱に見られる僕は、自分を抑えて相手の要求を聞いたうえで自分の要求をする方法で、ドイツとフランスでは自分の意思を伝えてうまくいっています。無理に自分を変える必要はないのです。気持ちが弱いのなら、それなりの方法はいくらでもあります。

マルセイユでは、ディフェンス陣から「『もっと守備をしろ』とフロリアンにちゃんと伝えろ!」と言われます。だけど僕は彼が彼なりに頑張って守っているのがわかるから、それ以上強く要求すると、今度は彼のストレスになってしまうと思い、「最低限これだけはやってほしい」と伝えたうえで、「でも最低限のことをやらないと、もっと苦しくなってよけいに守備に戻らなければいけないよ。そうなると、もっと体力を使うことになるよ」と言うようにしています。するとフロリアンは「そうなるのは嫌だから、ヒロキに言われたことは絶対にやるよ」と約束してくれます。これが本当の信頼関係ではないでしょうか。

他には、守備で5つやってほしいことがあったら、そのうち絶対にやってほしい3つを試合前に話して、残りの2つは試合状況によって、うまくいかなかった状況が出たときに、「いま、うまくいかなかったでしょ。だったら、こういうプレーをしてくれたら、もっと良くなるんじゃないか」と言えば、ちゃんと伝わります。

うまくいくのであれば3つのままでいいし、必要以上に相手に情報を詰め込みたくはないので様子を見ながら、言うべき状況がきたら伝えようと考えています。

自分に自信がなくても、伝え方次第で相手に自分の意思は伝えることができます。
「自分が言われる立場だったらどう言われたいか」
「できるだけ相手がポジティブに受け止められるように伝える」
これらを常に心掛けています。

 

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撮影/千葉 格

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酒井 宏樹(さかい ひろき)

1990年4月12日、長野県生まれ。千葉県柏市で育つ。柏レイソルU-15、U-18を経て2009年にトップチームへ昇格。2010年にJリーグデビュー。2011年にはチームの主力として活躍し、チームのJ1優勝とともに、ベストイレブン、ベストヤングプレーヤー賞を受賞。同年10月にはA代表に初選出される。日本での活躍が評価され2012年にドイツ・ブンデスリーガのハノーファー96へ完全移籍。主力として活躍した後、2016年6月にフランスの名門オリンピック・マルセイユへ完全移籍。マルセイユ移籍後も確固たる地位を築き、不動の右サイドバックとして活躍。日本代表でも欠かせない存在として、2018年ロシア・ワールドカップでの活躍が期待されている。

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『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』

(酒井 宏樹/KADOKAWA)

「日本人は活躍できない」という前評判を覆し、フランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、世界の注目を集めるサッカー選手となった酒井宏樹。彼はいかにして「自信のなさ」と「メンタルの弱さ」を克服し、心を強くしていったのか。自然と心が強くなる具体的な方法をこれまでのエピソードをとおして初公開!

この記事は書籍『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46」』からの抜粋です。
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