熊本の仮設住宅で暮らす81歳男性から学んだこと/鎌田實

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前の記事「「日野原重明先生は楽しむのが上手な人でした」鎌田實(1)」はこちら。

まるごと人生を楽しめる人は困難に負けない

生活を楽しめる人は、病気に強いというだけでなく、生き方として強いなと実感する出会いがありました。

一昨年の熊本地震で被害が大きかった益城町(ましきまち)を、何度目か訪ねたときのことです。地震で家が壊れ、仮設団地で暮らす81歳の男性がいました。
「いまも現役?」とぼくが聞くと、
「もちろん。ちょっと前までオトコのほうも元気だった」(笑)。
「そんなことは聞いとらん」
ぼくとその男性は一気に距離が縮まり、二人で大笑いをしました。

この男性、おもしろいだけではありません。地震の後も田植えをし、田んぼを守りながら、仮設住宅の草を一人で刈っていました。
「ほかにやれるものがおらんけん、おれがやっているだけばい」
ボランティア精神などと大げさなことは言わず、平然と当たり前に働いていました。

「じいちゃんとこの稲はどうだい?」
この問いに対する答えが、また素晴らしかった。
「美しかあ!」
この男性が、自分の田んぼや仕事をおもしろがっていることが伝わってきました。それが被災という逆境のなかで、輝いて見えました。

その半年後、益城町にボランティアで講演に行ったとき、彼のところを訪ねました。驚いたことに、彼は家を新しく建てていました。
家が壊れたら、直せる人間は直せばいい。直せるときがきたら直せばいい。彼の考え方はとてもシンプルです。そこに高齢だからもうダメという先入観はありません。どんな困難なときにも、前を向いて生きていくこと、それが人生を楽しむことだと、彼を見ていて感じました。

人生はいろんな出来事が起こり、困難にも直面します。年を重ね、病気や障害と出合うこともあるでしょう。それでも人生をまるごと楽しみ、おもしろく生きるには、どうすればいいのでしょうか。新しい連載のハジマリ、ハジマリ。

 

***カマタのこのごろ***

スキーで風になる
この数年、スキーで転倒し、肩と足を骨折しました。それでも懲りず、スキー板を新調し、体を鍛え直して臨んだ今年の冬。45日間、ゲレンデに通った。3㎞のダウンヒルをノンストップで3本滑ります。風になったような疾走感に夢中になりました。
もうすぐ6月で70歳。次の冬が来るまで、さらに体を鍛えて、もっとスキーを楽しもうと思っています。

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<教えてくれた人>
鎌田 實(かまた・みのる)さん

1948 年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長、東京医科歯科大学臨床教授。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。近著に『人間の値打ち』(集英社新書)、『だまされない』(KADOKAWA)。

この記事は『毎日が発見』2018年5月号に掲載の情報です。

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