「子供のころから、自分がどう生きたいかを考えてきました」"ツイッターおばあちゃん"ミゾイキクコさんインタビュー

「子供のころから、自分がどう生きたいかを考えてきました」"ツイッターおばあちゃん"ミゾイキクコさんインタビュー mizoi15.jpg"ツイッターおばあちゃん"として若者を中心に人気を集める、ミゾイキクコさんをご存知ですか? 76歳でツイッターを始め、現在83歳。毎日50前後ツイートをし、約9万人もいるフォロワーと交流。著書も2冊出版されています。

ツイートするのは暮らしのこと、政治のこと、高齢者問題など多岐にわたり、含蓄ある言葉に、フォロワーもいろいろ考えを巡らせるのが楽しいのです。では実際のキクコさんはどんな方なのでしょう。ご自宅にお邪魔して、たくさんお話を伺いました。

後編となる今回は、人生で大切にしている思いを中心にお届けします。

前の記事「「料理でもなんでも、頭を使って工夫をしない人はダメ」"ツイッターおばあちゃん"ミゾイキクコさんインタビュー」はこちら。

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「ツイッターは私自身が発信するのが目的ではなく、水をまいて皆さんの声を引き出そうという意図がある」

キクコさんのツイートは、いつもストレート。でも突き放しすぎず、時に寄り添いつつ甘やかさず。ご自身の意見をサラリと発信しています。

例えば、こんなツイートです。

――どう生きたいか、どういう暮らしをしたいかと子供の時から考える人は、それに向かって努力する。そしてそれに反することには鋭敏に感じるもの。そういうものは避けることができるもの。漫然と生きてたら避けられたものも避けられない。――

――自分を無駄遣いする人は自ら自分を賤しめている事になる。自分を大切にしよう。人に利用されないようにしよう。親であれ義父母であれ。人生自分の物。――

――義父母について、男から見れば大した問題ではないが、女から見るとわずらわしいそんざい。一般的に相手は自分たちを世話すべきものという観念が強いから。程度が悪ければ悪いほど。親は選べないが、義父母は選べるのでよくかんがえよう。――

ツイッターは「日常会話」であり、それ以上でもそれ以下でもないというキクコさん。

「ツイッターをやっていてうれしいことも嫌なこともありますけど、それは日常茶飯事よね。日常の会話と同じで、特にツイッターだからどうかということではないと思うの。日常の会話そのものもが楽しいですよ。朝になればおはようございますとか、朝食のなにこれがおいしそうですねって、普通の会話なのね。何も特別じゃない」

しかし、思ったことをそのままつぶやいているわけではありません。好奇心旺盛なキクコさんは、自身のツイートを呼び水にして、意見交換の場にしたいと願っています。

「なんでも言い含めるように全部言っちゃうとね、あぁそうですかで終わっちゃうのよ。
自分が言いたいことは7割くらい言うのがいいと思っているの。そうすると残りの3割を他の人が言ってくれるわけよね。そのほうが、会話が行ったり来たりできるのよね。
相手がいろいろ言ってくることがわたしの参考にもなって。それにまた他の人がいろいろ言うから、どんどん発展するのよ」

ダイレクトメッセージで人生相談が届くことも、少なくありません。
「『○○○したいけどお姑さんが反対している。どうやって説得したらいいですか?』という相談には、『年寄りなんて説得したってダメ』って言ってます。長く生きた人はもう考えが変わるわけはないんだから、お願いしたって意味ないのよね(笑)」

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タブレットは大小13もあるそう。屋内や外出時で使い分けるほか、ツイッターやメールで文章を打つ際、あいているタブレットで文字や情報を調べたりします。


「子供のころから、自分がどう生きたいかを考えてきました」

お年寄りを説得するのはムダな努力だと言い切るキクコさん。それは、「自分の人生は自分の好きなことをやるためにあるのだから、自分を一番大切にしてほしい」という思いからです。

老後の生活のために子供やお嫁さんをはじめからあてにする親にも憤りを感じています。

「自分が病気になったら自分でなんとかするしかないのね。つまり動けなくなったときのためのお金を用意しておいて、そういう状況になったらこうしようって決めて、その実現のために努力すればいいと思うの。
自分で申告や申請をしないことには社会保障もしてもらえないから、そういう知識と自分で処理できる力が必要なのよね。それができない人は、はじめから子供におんぶしようってしてしまうわけじゃないですか。恩着せがましく子供に"育ててやった"とか言うようになっちゃうのね。でも、自分が産んだ子供を育てるのは当たり前な話。独り立ちさせるまではね、義務なのよ。独り立ちしたら、子供には子供の生活があるわけですから」

キクコさんが自立した生活をすることに強い思いを持つのは、子供のころからそれを目指していたから。女性が教育を受ける機会が少なかった時代に、ご両親の後押しもあり大学まで卒業しました。

「よく『ミゾイさんは大学に行ったからそういう考えなのよ』って言われるのよね。それは違うのよ。そういう考えだったから大学に行ったのよ、意欲を持って。逆なのよね。
私は子供のころから、ああ生きたい、こう生きたいって考えてきましたもの。田舎に育ったから、農家のお嫁さんを見ていると大変そうで、田舎に残りたくないなって思うわけね。そう思うと人間は努力するわけ、考えて。
感じない人はダメよね。だから『50歳になってこれから老後どうしたらいいの』って聞かれたりするけど、いまそれを言っているようじゃダメなのよ。言っているだけじゃなくて、考えて行動しないとね

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できるだけ長く一人暮らしを続けたいと考え、息子さんからの同居の申し出も断りました。その理由は、同居してお嫁さんに気を遣うのが嫌だから。

「お嫁さんは他人だから、一緒にいると気を遣ってしまうから同居は嫌なのよ。気を遣わない人は同居したがるのよ、同居してこき使う。気を遣わないからちっとも気がとがめない、だから平気でいられるのね。でも気を遣う人は疲れちゃうから、一人がいいって思うのね」

かと言って、息子さんたちと交流がないわけではありません。

「周りの人も、子供が近くに住んでいて自分は一人暮らしっている人が多いわね。うちも隣町の二男が灯油を買ってきてくれたり、庭の剪定をしたりしてくれますからね。別々に住んでいるから関わりがないわけではなくて、朝、家に立ち寄ってくれたりするのね。
仙台に暮らしている息子はツイッターを見て、ちゃんとやっているなって分かるから安心するのね。息子の連れ合いが、いつも私のツイッターを見てるのよ(笑)」

 

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剪定などできないことは息子さんが手伝ってくれるというお庭。花や緑があふれています。

ご家族と程よい距離を保ち、自分の人生を楽しんでいるキクコさん。
庭の花が咲いたという暮らしの中の小さな喜び、生きることへの姿勢、家族の在り方など、今日もキクコさんはつぶやきます。

 

取材・文/ほなみかおり 撮影/齋藤ジン

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ミゾイキクコさん

1934年、埼玉県生まれ。お茶の水女子大学理学部を卒業。教職に就いたあと、26歳で専業主婦に。2010年から始めたツイッターで戦争体験や日常のこと、価値観などをつぶやき、含蓄ある言葉に共感が集まっている。著書に『何がいいかなんて終わってみないとわかりません。』(KADOKAWA)、『キクコさんのつぶやき 83歳の私がツイッターで伝えたいこと』(ユサブル)。ツイッター:@kikutomatu
 
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