「おひとりさま」に潜む、誰にも言えない心の奥の"欲望"とは

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「おひとりさま」「美魔女」「草食男子・肉食女子」「イクメン」などの流行語。いつの間にか使われるようになって一般化したことばを、とある広告会社で「社会記号」と名付けました。どこからともなくやってきた「社会記号」には、人々の意識を一変させて、やがて世の中を支配し動かしていく力が潜んでいるといいます。

長年にわたって「ことば」を商品として扱ってきたクリエイティブディレクターの嶋浩一郎氏と、マーケティングの専門家である一橋大学教授の松井剛氏の共著『欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング(集英社新書)』から、こうしたことばがどのように人の心を動かしていくのかを読み解いていきましょう。


実は皆、一人で好きなようにしたかった!

ここ数年で「おひとりさま」ということばは世の中に定着しました。「煩わしい他人と一緒に行動するより、一人で自分の好きなようにしたい」という、実は意外に多くの人が抱えていながらも、なかなか表に現れることのなかった心の奥の"欲望"。今まで行き場もなくさまよっていた「こうしたい」という気持ちが、「おひとりさま」という"名前"、つまり「社会記号」がつけられたことによって、人々が意識するようになったのです。

同様の意味を表すことばとして、「ソロ活」や、若干のネガティブな意味合いも含んだ「ぼっち」などということばも生まれました。


消費マーケットを支配する「ことば」の力

「社会記号」の認知度が高まるにつれて、消費マーケットも拡大していきます。例えば、「おひとりさま」であれば、一人用のカラオケボックスや一人向けパッケージ旅行、「美魔女」であれば、若さと美を保つアンチエイジング化粧品、「イクメン」であれば、男性が使いやすい育児グッズ......。さまざまな業界で、特定の顧客をターゲットにした今までになかった商品やサービスが生まれ、時としてこれが爆発的なブームとなります。それがまた、さらなる消費を生むのです。ことばの力ってすごいですね。

社会記号とは、人々の生き方や社会の構造が変化していくときに、世の中の端っこに現れる予兆のようなものです。(中略)新しいことばが定着するということは、その現象がひとつの文化となった証(あかし)でもあります。

ことばは生きていて、今という時代を反映します。これから先、どんな新しいことばがうまれてくるのか、非常に楽しみですね。

  

文/銀

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『欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング(集英社新書)』

(嶋 浩一郎・松井 剛/集英社)

"流行語"として取り上げられることも多い「社会記号」が生まれる背景には、人の欲望が関係しているという。なにげなく目や耳に入り、いつのまにか使っていることばの誕生の裏にある不思議とは?

 

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