なぜ体力測定B判定でも、日本代表として世界を相手に活躍できたのか?
数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意を大公開!
「やることが山積みで全然前に進まない」「頭の中がごちゃごちゃでつらい」などの悩みをかかえているあなた、本書『「一瞬で決断できる」シンプル思考』から考え方のコツを学びましょう。
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経験が可能性を広げてくれる
「ポジションを変える」ことには、視野が広がり、先読みの精度が向上するというメリットがある。
僕が本職とするポジションはボランチである。ボランチはポルトガル語で「車のハンドル」を意味する通り、攻守の要(かなめ)であり、DFの前で守備的な役割をすることが多い。長いあいだボランチのポジションでプレーしてきたこともあって、最も自分のよさを活かせると考えていた。
だが、日本代表にオシム監督が就任すると、僕はFWの後ろの二列目のポジションで起用されるようになった。ボランチよりも高いポジションをとることになるため、守備よりも攻撃的な役割を担うことになる。
ボランチのほうが活きると自己分析していた僕は、オシム監督に「ボランチをやらせてほしい」と直談判したこともあるが、「おまえは守備ができないだろう」とストレートに言われ、あえなく却下された。結局、オシム監督は僕の攻撃面に期待してくれているのだと気持ちを切り替えて、二列目のポジションをやり切る決意をした。
二列目のポジションに入ってまず気づいたのは、ボランチのときとは視界がまったく異なるということだ。
たとえば、二列目に入ると、ボランチからのパスに「なぜ、こっちのスペースに出さないんだ」「なぜ、もっと早いタイミングでパスを出さないんだ」と感じることが何度もあった。ボランチをしていたときは、自分のタイミングでパスを出していたが、二列目に入ってパスを受ける側に立つと、「前線の選手は、こういうパスが欲しいんだ」と肌身で感じることができた。
この経験は、ボランチに戻ったときに大いに役立つことになった。前線の選手が受けやすいパスを出すことを心がけるようになったし、「こういう状況のとき、前線の選手ならこのタイミングで、このスペースを使うだろう」と予測することができ、先読みのレベルも格段に上がったという実感がある。
相手の立場になると見えることがある
コミュニケーションや仕事でも、自分とは異なるポジションの視点に立つことで、視野を広げることができるだろう。たとえば、上司に仕事を頼まれたとき、自分のやり方で仕上げるのではなく、「自分が上司だったら、部下にどんな仕事をしてもらったら助かるだろうか」という視点で考えてみる。そうすることで、かゆいところに手が届くような気遣いもできるだろう。
そのほか、お客様や取引先、先輩、後輩、次の工程で働く人、別の部署などのポジションから自分の仕事を見ると、新たな気づきがあり、質の高い仕事もできるはずだ。人間関係でいえば、いつも口うるさく注意してくる人が、実は自分の不注意により大切な教え子に大変なケガを負わせてしまった過去をもつ元教師で、それが原因で「口うるさい」としたらどうだろう。きっと相手への感情はこれまでとは変わったものになると思う。
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撮影/佐藤 亮
遠藤 保仁(えんどう やすひと)
1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガを経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとして、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録をもつ。178㎝、AB型。
『「一瞬で決断できる」シンプル思考』
(遠藤保仁/KADOKAWA)
「国際Aマッチ出場数最多記録保持者」など、数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「一瞬で決断できる」シンプル思考の原点に迫る! 年齢を重ねるごとに進化する「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意44。