なぜ体力測定B判定でも、日本代表として世界を相手に活躍できたのか?
数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意を大公開!
「やることが山積みで全然前に進まない」「頭の中がごちゃごちゃでつらい」などの悩みをかかえているあなた、本書『「一瞬で決断できる」シンプル思考』から考え方のコツを学びましょう。
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視野が狭いときは身の丈に合ったことをする
「遠藤はすごくいいときと、すごく悪いときの幅が小さい。好不調の波があまりなく、パフォーマンスが安定している」と言われることがよくある。
そう見えるとしたら、自分の頭の中にプレーの基本形が描けているからだろう。
「こういうときはこうすれば元に戻る」という経験があるのも強みだと思う。
だが、そうはいっても、僕にも「今日はトラップがうまくいかない」という日がある。
プレーの調子が悪いとき、だいたい次のどちらかが原因である。
ひとつは、ボールタッチの感覚が悪い。いわゆるボールが足につかない状態である。
もうひとつは、視野が狭い。調子がいいときは、視界の端のほうまでぼんやりとながら見えるものだが、調子が悪いときは、その見える範囲が狭くなっている。そういうときは、当然、俯瞰する力や先読みする力も落ちるので、プレーの質も低下する。
視野が狭くなる原因としては、連戦の疲れの影響、あるいは逆にひさしぶりの実戦で感覚が鈍っているからということもある。
こういうときは、シンプルにプレーすることが大切だ。できないことはできないとあきらめて、今日できる身の丈に合ったプレーをすることに徹する。たとえば、視野が狭いと感じるのであれば、まずは確実に見えている味方の選手にパスを出してから、見る角度を変えて、位置関係を確認してからボールをもらい直して、パスを出す。見えていないのに、パスを通そうとしてもミスをするだけである。
無理をせずに身の丈に合ったプレーを続けていると、体が慣れてきて、いつも通りの視野を取り戻せることもある。
うまくいかないときはシンプルにやる
仕事でも調子がよいときと悪いときがあるだろう。調子が悪いときは、身の丈に合った仕事をしたほうがいい。
大きな仕事や重要な仕事は、調子がよいときに取り組んだほうがうまくいく。調子が悪いときは、簡単な仕事、あまり頭を使わなくてもいい仕事を中心にする。簡単な仕事をこなしているうちに、だんだんと調子が戻ってくるはずだ。
実は、このような無理をしない姿勢は、長期的な観点から見ればパフォーマンスを安定させることにつながる。無理して背伸びをすれば、自分の得意とする型を崩すことになる。野球選手はバッティングやピッチングのフォームを崩すと、なかなか元に戻すのがむずかしいとよく聞くが、何事も無理をしたところで結果は出ないし、自信を失うだけである。
うまくいかないときこそ、無理をせず、シンプルに取り組むことが大切だと考えている。
撮影/佐藤 亮
遠藤 保仁(えんどう やすひと)
1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガを経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとして、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録をもつ。178㎝、AB型。
『「一瞬で決断できる」シンプル思考』
(遠藤保仁/KADOKAWA)
「国際Aマッチ出場数最多記録保持者」など、数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「一瞬で決断できる」シンプル思考の原点に迫る! 年齢を重ねるごとに進化する「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意44。