前編「世の中にはフェイクニュースがあふれている/鎌田 實さんに聞く(1)」はこちら。
臓器移植の順番ミスは許されない
今年は臓器移植法施行20年。日本臓器移植ネットワークは、昨年10月の現在のコンピューターシステムの導入後、脳死臓器移植は21例あり、3例で選定ミスが見つかりました。臓器移植を待ちながら順番が来ずにやるせない気持ちで亡くなっていく人たちもいます。二重三重のチェックが当たり前に行われないとおかしいと思います。
こういうことが起きると臓器移植に協力しなくてもいいやという気持ちにさせられる人もいると思います。コンピューターシステムに「間違いはない」とだまされてはいけません。みんなが納得するシステムを構築してほしいです。
GDP、GNIにだまされるな。人間開発指数に注目
GDP(国内総生産)やGNI(国民総所得)を押し上げるのに、近年の日本政府は躍起になってきました。GDPもGNIも、日本はアメリカ、中国に次いで世界第3位。GNIは、ある一定期間に、ある国民によって国内外で新しく生産された財やサービスの付加価値の総計。国際法で使用が禁止されているクラスター爆弾を造っても、GNIに入るのです。
日本とは関係のない話のようですが、そうではありません。クラスター爆弾を製造するアメリカ、中国、韓国の企業6社に、世界166機関が約3.5兆円を投資しています。なんと日本の有名金融機関や保険会社も含まれているのです。
世界が批判している危険な武器を造っていても、GNIにカウントされるのです。そして、ぼくたちはGNIが上がったから、日本の経済は盤石だ、と思ってしまうのです。
それに比べれば、ブータンのGNH(国民総幸福量)は面白い尺度です。ただ、経済的指標には弱すぎます。そこで、いま注目されているのがHDI(人間開発指数)です。
HDIは、豊かな人間性が広がる、長寿、知識、人間らしい生活水準の三つについて測ったものです。0から1までの数値で表され、1に近いほど、個人の自由が認められ、人間性が豊かであるとされます。出生時の平均余命や、成人の識字率、就学率などが大きく関わります。日本は20位。決して高くありません。1位はノルウェー。アメリカは8位。中国は90位です。
このHDIを考案したマブーブル・ハック博士はこんなふうに話しています。
「HDIは、GNPと同じ程度に俗っぽい尺度。ただ、GNPほど社会的側面に無理解でない尺度だ」
GNP、GNIなどの経済的指標だけでなく、長寿や生活水準、知識などに関わるHDIにしばらく注目してみてはどうでしょうか。教育が行き届いて、一人ひとりが自由でいて、フェイクや空気に惑わされない自立した国民が多くなる「人間開発指数」を、日本でも使う習慣が広がるといいですね。
鎌田 實(かまた・みのる)さん
1948 年生まれ。医師、作家、東京医科歯科大学臨床教授。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。近著に『遊行(ゆぎょう)を生きる』(清流出版)、『検査なんか嫌いだ』(集英社)、『カマタノコトバ』(悟空出版)、『「わがまま」のつながり方』(中央法規)。