フェイクニュースにだまされない
トランプ米大統領は事あるごとに「やるやる」と言っているが、口だけで行動が伴っていません。そんな中で実行できた数少ないものの一つが、パリ協定(※1)離脱でした。
その際の声明でも、平然と「フェイク(※2)」が垂れ流されました。
「パリ協定が全面履行されても、2100年までに摂氏0.2度程度しか気温は下がらない」
多くの科学者が、何もしなければ地球の気温は5度以上上がると推測していることを知らないのでしょうか。
「2040年までに製造業から650万人分の雇用が消える」
パリ協定を履行すれば再生可能エネルギー業界が活発化し、雇用が拡大していくでしょう。
そのことはまったく無視しているようです。
「私は炭鉱業で栄えたピッツバーグの市民を代表して当選した」
トランプ氏は事実を確認しようなんてさらさら考えていないようです。大統領選でピッツバーグ地区で勝利したのはクリントンです。彼にはファクト(事実)をチェックする習慣がないのでしょう。何を言ってもいいと思っているようです。
どうせ半分の人はまったく信じてくれない、残りの半分は何を言ってもそうだ、そうだとうなずいてくれる、と言わんばかりです。
しかし、政治がまっとうに機能していくには、いままで以上に厳しいファクトチェックをしていく必要があると思います。
※1 パリ協定=温暖化対策を定めた国際協定
※2 フェイク=虚偽の情報、ニュース
インペイが企業を腐らす
富士フイルムホールディングスの海外子会社が、不正会計をしていたことが発覚しました。あの東芝もパソコンなどの事業で、長い間、利益を水増ししていたことが2015年に明るみに出ました。さらに東芝は米原発子会社ウェスチングハウスの巨額損失の影響で上場廃止となる可能性も出てきました。2011年に発覚したオリンパスの巨額損失隠し事件もありました。
なぜ、人間はこんなことをしてしまうのでしょう。利益至上主義が大きな理由だと思います。少数の幹部だけが、大事な情報や数字を握り、外には出さない。「インペイ」です。この習慣がつくと噓をつきやすくなります。インペイとフェイクが組織を腐らすのです。トップはヘマをすると、隠したがります。それを見ないふりをしてしまう中間管理職が会社をダメにするのです。「空気を読め」という言葉にだまされてはいけません。時には会社全体のことを考えて、勇気を出すことも大事です。
後編「GDP、GNIにだまされるな。いま、人間開発指数に注目/鎌田 實さんに聞く(2)」はこちら。
鎌田 實(かまた・みのる)さん
1948 年生まれ。医師、作家、東京医科歯科大学臨床教授。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。近著に『遊行(ゆぎょう)を生きる』(清流出版)、『検査なんか嫌いだ』(集英社)、『カマタノコトバ』(悟空出版)、『「わがまま」のつながり方』(中央法規)。