知らないと恥をかく!いまや「大人の教養」となった日本のアニメ

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「アニメは子どもが見るもの」、なんていう考えはもはや化石! アニメ業界に詳しい社会評論家で、「オタキング」(=おたくの王)と自称する岡田斗司夫氏は、著書『大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ』の中で、「日本のアニメは未曾有のゴールドラッシュを迎えた」と宣言しました。

一昨年公開された映画『君の名は。』は、中国における日本アニメの興行収入記録を更新、劇場用長編アニメ『この世界の片隅に』は世界50以上の国や地域で上映され、高い評価を得ました。

さらに近年は、動画配信サービスのNetflixをはじめ、世界中のエージェントたちが日本のアニメに投資しようと押し寄せているといいます。

昔から「アニメは日本の誇る文化」といわれてはきましたが、ようやくここにきて、利益を生み出す産業、ビジネスとして、世界から認知されるようになってきたといえるでしょう。

「国の主要産業について、ある程度の教養を大人が持っておくのは当然」――。そんな時代がやってきているのです!

 
『君の名は。』大ヒットの理由は圧倒的な"ルック"にあった!

『君の名は。』といえば、色彩豊かな田園風景や彗星の降り注ぐ空など、美しいシーンを連想する方も多いと思いますが、これこそが"ルック"の力だと岡田氏は言います。"ルック"とは、映画の画的な個性を指し、一つのカットを見せただけで観客を一気にその世界に引き込んでしまうような、力を持った映像のこと。「これまでの邦画は洋画に比べて、ルックで大きく後れをとっていた」(岡田氏)のですが、『君の名は。』では見事に巻き返しを図りました。

アニメは実写とは違って、想像の中にしか存在し得ないような風景も自由に再現することができます。空の青、新緑、木漏れ日など、美しさを存分にデフォルメできるというわけです。そうやって「普通の風景をものすごくきれいに撮る」ことで、観客の印象に残る"ルック"を作り出した、ということ。ドラマ『北の国』シリーズの倉本聰監督や、映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のJ・J・エイブラムス監督も、『君の名は。』の"ルック"を高く評価したそうです。

 

『機動戦士ガンダム』の革新的な試みとは?

テレビ版『機動戦士ガンダム』は、緻密な演出で構成された、優れたSF作品であると岡田氏。その斬新さは、「敵」の設定に表れているといいます。第一話の冒頭、永井一郎氏による有名なナレーションは「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた――」。つまり、追い出された都市=敵が、追い出した地球に戦争を挑んできた、という構図です。

『ガンダム』が初めて放映されたのは1979年ですが、70年代にはアフリカでさまざまな国が独立し、ベトナム戦争の終結もありました。日本のマスコミは「植民地が独立戦争をする」ことを「正しいこと」としてきたので、この「敵が独立戦争を挑んでくる」という設定は、当時の視聴者には違和感があるものだった、と指摘しています。

また、テレビアニメ『マジンガーZ』がロボットアニメの定石を確立して以来、「毎回新しい敵ロボットが登場する」「敵ロボットは派手な警戒色で特殊能力を備えている」というパターンがありましたが、『ガンダム』はそれも全てひっくり返してみせたと、岡田氏は言います。敵ロボットは「ザク」というモビルスーツ。緑一色の同じ形をしたものが、複数体繰り返し出てきます。当時はまだ「量産型」という言葉は使われていませんでしたが、暗にそういう概念を示唆しているのでは、と岡田氏は分析します。

知れば知るほど奥が深いアニメの世界。書籍には他にも、ジブリ作品や『この世界の片隅に』など、有名タイトルのアニメ評論が多数紹介されています。演出の妙や秘められた思想を知ることで、新しい発見があるかもしれませんよ!

 

文/寺田きなこ

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『大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ』

(岡田斗司夫/KADOKAWA)

アニメのすべてを知り尽くしたという著者が、『君の名は。』や『機動戦士ガンダム』、ジブリ作品などの名作アニメを10倍面白く観られるポイントを解説。監督の思想や社会背景などにもスポットを当て、作品の構造をひも解きます。

 

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