2022年7月23日・24日、愛知県の愛・地球博記念公園（モリコロパーク）アイススケート場で開催されたアイスショー「THE ICE」。3年ぶりに世界のトップスケーターも参加し、 "座長"の宇野昌磨選手をはじめ、ネイサン・チェン選手、坂本花織選手、ヴィンセント・ジョウ選手といった豪華メンバーが集結しました。コラボレーション演技などTHE ICEならではの演出も大好評だった本大会の様子を、スポーツ写真家・中村康一氏にレポートしてもらいました。
2007年の創設以来、今年で15年目を迎えたTHE ICE（ザ・アイス）。日本を代表するアイスショーであるが、一昨年はコロナ禍のために無念の中止。昨年は開催にこぎつけたものの、国内選手のみで構成されたものであった。それが今年、世界から多数のトップスケーターを招聘する、本来の形でのザ・アイスが帰ってきた。7月23日、24日と愛・地球博記念公園で開催された愛知公演の模様を、写真とともにご紹介したい。
今年のTHE ICE、現地で観戦された方ならば、初回公演から素晴らしい完成度を見せたことを実感していただけたものと思う。今年はリハーサルを限定的ながら公開したので、水曜日からの3日間のリハーサルをご覧になった方もいることだろう。実はこの3日間のリハーサルというのは長いTHE ICEの歴史の中でも初めてのこと。過去のTHE ICEでは木曜日、金曜日の2日間で仕上げて本番に臨んでいたのだ。リハーサルを一日増やした効果は絶大で、余裕をもって仕上げることができ、初回公演から練度の高い、こなれたショーを披露できたことにつながったのだ。
3日間のリハーサルを見て特に印象的だったのは、ネイサン・チェンが実に意欲的に振付、演出についての意見を出し、群舞においても細かなタイミングまで繰り返し練習をし、ショーの完成度を高めるために積極的に取り組んでくれていたことだ。THE ICEは、他のショーよりもコラボナンバー、群舞、そしてオープニング、フィナーレと作り込む部分が多く、それだけスケーターにとっては負担の大きな面がある。実際、過去にはこうしたショーに慣れてないスケーターからの戸惑いの声を聞いたこともある。が、ネイサン・チェンほどの偉大なチャンピオンが意欲的に取り組むことで、チーム全体の空気が引き締まり、和気あいあいとしながらも集中力を持ってゴールへと向かう雰囲気が醸成されていたように感じる。
念願の世界チャンピオンとなった坂本花織だが、そんなことはどこかに置いてきたかのように、関西のノリで笑いを取り、盛り上げてくれていた。特にジェイソン・ブラウンとのコラボナンバーで吉本新喜劇の茂造に扮した姿は、世界女王が笑いのためにここまでやるのかと、いっそ清々しささえ感じさせる、振り切ったパフォーマンスを見せてくれた。
そしてショーの主役、宇野昌磨。彼は決して大きな声でチームを鼓舞するタイプではないが、氷上でのパフォーマンスにより、背中でチームを引っ張る姿を見せてくれた。実際、とてもオフシーズンとは思えないほどの仕上がりでショーに臨み、どの公演においても大トリにふさわしい感動的な演技を披露してくれた。3年振りの"フルスペック"でのTHE ICE。過去、15回の歴史の中でも出色の出来栄えとなったと感じた愛知公演だった。
