酢玉ねぎ(酢玉ねぎの基本の作り方はこちら)はすでに常備菜、保存食として年間通して作っている、という方も多いかもしれません。毎日食べても飽きないおいしさなので健康のためにも続けやすく、いつもの料理にちょっと足すだけという手軽さも人気の理由です。
今回は、酢玉ねぎの素材・玉ねぎについて、料理研究家の村上祥子さんにお聞きしました。
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【玉ねぎを賢く食べるためのQ&A】
Q.新玉ねぎと玉ねぎの栄養面での違いはありますか?
A.玉ねぎは新玉ねぎより硫化アリルの含有量が多く、薬効も高いです。
新玉ねぎは玉ねぎを通常より早く収穫して、乾燥させずにすぐ出荷。新玉ねぎの水分は玉ねぎに比べて10%ほど多く残っていて甘くてやわらかいので、生食またはサッと加熱する調理がおすすめ。オニオングラタンのようにじっくり炒める料理には玉ねぎが向いていますよ。
Q.加熱調理したときと生食では何か栄養面の違いはありますか?
A.加熱調理で栄養価が上がります。
加熱調理するとペクチンでできている玉ねぎの細胞膜が熱で溶け、細胞内に含まれる健康成分、ケルセチン、イソアリイン、グルタチオンなどが溶け出し、体内で利用しやすくなるというメリットがあります。
Q.生食する場合は水にさらさない方がいいですか?
A.さらしすぎると薬効成分が流出するので注意!
玉ねぎに含まれる薬効成分の多くは水に流れ出やすいので、水にさらす場合は5分までで済ませるようにしましょう。サラダにする場合は酢をふりかけて辛みを和らげ、その酢をドレッシングとして利用すると成分がムダなく摂れます。
Q.空気に触れさせてから調理したほうがいいのはなぜですか?
A.少し放置すると、薬効成分が増えるからです。
玉ねぎを切ると壊れた細胞から出る酵素の働きで、血液をサラサラにする薬効成分が生まれます。その成分は常温で置いておくと、どんどん増加。20分はそのまま放置しておくとよいでしょう。その後、加熱や調理すると高い効能が期待できます。
Q.玉ねぎの皮は、健康に役立ちますか?
A.皮には抗酸化成分がたくさん含まれています。
皮は抗酸化成分ケルセチンの宝庫。ぜひ皮も有効活用しましょう。外側の皮は捨て、内側のきれいな皮を数枚、だしパックなどに入れてスープやシチュー、カレー、煮ものなどに利用します。また、煮出してお茶として飲むのも人気です。有機栽培のものを使うと安心です。
Q.紫玉ねぎや小玉ねぎも栄養成分は同じですか?
A.紫玉ねぎは栄養成分がプラスされます。
紫玉ねぎの色はポリフェノールの一種、アントシアニン。赤ワインやブルーベリーなどと同じ色素で、眼精疲労他に効果的とされます。また、小玉ねぎは普通の玉ねぎを小さく育てたもので、栄養成分は変わりません。
Q.玉ねぎは辛いのに加熱するとなぜ甘くなるのですか?
A.豊富なオリゴ糖のおかげです。
生の玉ねぎが辛いのはイオウ化合分、硫化アリルのせい。加熱すると細胞膜が破れ、オリゴ糖が溶け出します。消化吸収されないので、腸内でビフィズス菌のエサになり、善玉菌を増やします。このオリゴ糖はすいか並みの甘さを持っていますよ。
Q.酢玉ねぎは毎日食べるのがよいのでしょうか?
A.毎日食べることで効果が出ます。
毎日50gを習慣的に食べることで、酢と玉ねぎの健康成分を摂取していただくと効果を実感しやすくなります。
Q.体質的に玉ねぎが合わない、食べないほうがいい人はいますか?
A.生ではだめでも加熱で大丈夫なこともあります。
生食では稀に硫化アリルが合わない方がいますね。そういう方も加熱して硫化アリルがビタミンB1と結合し、アリチアミンに変わると全く平気になるようです。生が苦手なときは、加熱してお試しください。
村上祥子(むらかみ・さちこ)さん
料理研究家・管理栄養士。1942年、福岡生まれ。公立大学法人福岡女子大学国際文理学部・食・健康学科客員教授。食材の持つ力で健康寿命の延伸を図る研究に関与。同大学にある「村上祥子料理研究資料文庫」で50 万点の資料が一般公開されている。公式ホームページはこちら。