いまや"国民病"ともいわれる花粉症。対策として、外出時にはマスクやめがねを使っている人も多いかもしれませんが、実は家の中にも外から持ち込んだ花粉が大量にたまっていることをご存じですか?
「家の掃除によって、花粉症の症状を最小限に抑えることができる」と語るのは、亀田総合病院などで病院清掃に30年携わってきた松本忠男氏。逆に、きちんと掃除がされていない部屋で過ごしていると、どんどん症状が悪化してしまう可能性もあるとか。松本氏の著書『健康になりたければ家の掃除を変えなさい』から、花粉を撃退する掃除方法をご紹介しましょう。
ホウキや水拭きは逆効果!まき散らさずに除去するのがポイント
「花粉には、家の中での集まり方に特徴があり、それを踏まえた掃除法で効果的に除去することが大切」と筆者は言います。 まずは家の入口である玄関周りですが、ほうきで掃くのはもってのほか! ホコリが舞い上がり、かえって花粉を拡散させてしまうそうです。雑巾で水拭きするのも、花粉を塗り広げてしまう危険性があるとか。
では、どうすればいいのでしょうか? 正解は、ドライシートのフローリングワイパーをゆっくりと滑らせること。床面に密着させ、力を入れ過ぎずに静かに動かすと、花粉をまき散らさずに除去することができるといいます。
次いで、屋外で身につけていたものを脱ぐクローゼット周りや脱衣所も、花粉がたまりやすいとされる場所。玄関と同様の方法で掃除をするのがお薦めだそうです。
花粉症だけではない!間違った掃除が招く健康被害はまだまだある
キッチン周りや食卓などに除菌スプレーを吹き付けて布拭きするとき、念入りにしたいからとゴシゴシこすっていませんか? 実はこれが大きな間違いなのです。
消毒を目的とするなら、クロスを「一方向拭き」にするのが基本とのこと。車のワイパーのように何度も往復させてしまうと、クロスで拭きった細菌やウイルスがあちらこちらに再付着してしまい、せっかくの掃除が水の泡に! インフルエンザや風疹といった感染力の高いウイルスが付着していた場合、さらに感染を広めてしまうこともあるそうです。
また、風呂場の掃除では、肺MAC症を引き起こす「MAC菌」という、結核菌によく似た菌の感染に気をつける必要があるといいます。肺MAC症とは、近年日本で急増している肺疾病で、咳や血の混じったたんなどの症状があり、重症化すると呼吸困難に陥ることもある恐ろしい病気。MAC菌はお湯の注ぎ口やシャワーヘッドのぬめり、湯あかなどに生息し、42度前後で繁殖しやすいとされています。
感染を防ぐために重要なのは、風呂掃除の際に必ず換気をすること。窓の両側を10センチメートルずつ開けておくと、風の勢いが増して効率的に換気ができるそうです。また、掃除で使う水の温度もポイント。温かいお湯で掃除をすると、風呂場の温度が上げり、かえって雑菌やカビを増殖させることになってしまうので、冷たい水を使うようにしましょう。
「掃除は決して取るに足らないことではなく、人の身体と心を、明るく健やかなものへと導く非常に尊い仕事です」と著者。正しい掃除をコツコツと続けて、健やかな毎日を送りたいですね。
文/寺田きなこ
(松本忠男/扶桑社)
間違った掃除方法で家の汚れをまき散らしてしまい、病気のリスクを高めてしまうケースが急増中! インフルエンザ、ノロウイルス、花粉、カビなどから、大切な家族を守るテクニックを「病気と掃除のプロ」が教えます。