40代半ばを過ぎて妙にイライラすると感じたら、更年期が始まっているかもしれません。更年期は、思春期と並ぶホルモンの大変動期で、疲労や肩こり、のぼせなど、これまで感じなかったさまざまな不調が起こりやすくなります。ひどくなると、更年期障害と呼ばれ、日常生活に支障をきたすこともあります。
この大変動期をできるだけ心地よく過ごすにはどうしたらよいのか、飯田橋レディースクリニック院長の岡野浩哉先生にお伺いしました。今回はその10回目です。
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HRTの開始は閉経後、なるべく早期に!
ホルモン補充療法(以下、HRT)を受けてみたいと思ったら、まずは婦人科や更年期外来などを探して受診しましょう。ここでは、治療の流れや受診前に知っておきたい事柄を詳しく紹介します。
治療は、HRTを行える体の状態か否かをチェックすることから始まります。事前検査は下記のほか、骨密度検査、心電図、心理テストなどを行うこともあります。
●HRTの事前検査
・問診
いまの体の状態や症状を確認、月経の様子を把握します。つらい症状がいつ頃から始まったのか、いま悩まされている症状を簡潔に医師に伝えられるようにしておくとスムーズです。
・内診、細胞診、超音波検査
婦人科疾患の有無を確認します。
・血液検査
ホルモンやコレステロール、中性脂肪、肝機能、腎機能などをチェック。
・乳房検診
乳がんの有無を調べます。
上記のような事前検査で問題がないか確認できたら、治療をスタートします。
「すでに症状がある場合、HRTを開始するタイミングは早い時期の方が良いとされています。というのも、閉経後、時間が経ちすぎてから始めると、心筋梗塞や狭心症など心血管系のリスクが増えるという指摘があるためです。60歳以上の方でHRTを始めたいという場合は、本当にその療法が自分に必要なのか、医師とよく相談してください。また、HRTを続けている間は、症状の改善状態をみるためにも、定期的な受診を心がけてください」とは、飯田橋レディースクリニック院長の岡野浩哉先生。
たいていの女性はHRTを始めることができますが、事前検査の結果、始められない場合もあります。下記の項目に当てはまる人はHRTを受けられない可能性があります。思い当たることがあったら、医師に相談しましょう。
●HRTを受けられない人
・乳がんにかかっている。またはかかったことがある
・子宮内膜癌などに現在かかっている
・重度の肝臓疾患がある
・心筋梗塞や脳卒中にかかっている。または、かかったことがある
・原因不明の性器出血がある
・血栓症にかかっている。またはかかったことがある
・妊娠が疑われる場合
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取材・文/笑(寶田真由美)
岡野 浩哉(おかの・ひろや)先生
飯田橋レディースクリニック院長。群馬大学医学部卒業後、同医学部附属病院産婦人科、 東京女子医科大学産婦人科などで臨床経験を経て、平成20年に飯田橋レディースクリニック設立。 「患者にやさしい医療」をモットーに、新聞・雑誌等メディアへ執筆多数。