テレビやネットにあふれるあやしげな健康情報や社会の思い込み。あなたはいつのまにか信じてしまっていませんか?
だまされないでください。
医師にして作家である鎌田實が50年近く医療に携わることで気づいた、健康のための王道をまとめた書籍『だまされない』で、「健康で幸せに生きるという目標」を達成するための技術を身に付けましょう。
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前の記事「「賢い電話」を使いすぎるとバカになる!?/鎌田實「だまされない」」はこちら。
スマートフォンを使わない人のほうが賢い
カナダのオンタリオ大学が660人を対象に計算・語彙(ごい)力・論理的思考などさまざまなテストを行った研究では、スマートフォンの利用時間が短い人のほうが、認知能力や分析的な考え方のスコアが高いことが判明しました。
また、米国テキサス大学が800人のスマートフォン利用者を対象に行った研究では、テストを受ける際にスマートフォンの電源をオフにして、(1)スマートフォンを机の上に置く、(2)ポケットやバッグに入れる、(3)別の部屋に置く、という3つの条件下でテストを受けたとき、(3)のスマートフォンを別の部屋に置いた場合が最もテストの成績がよいことが判明しました。
どういうことかというと、電源を切ったスマートフォンであっても、近くにあれば、気になって集中力や思考力が低下している可能性があるというわけです。これほどスマートフォンは私たちの脳を占領し始めています。
ベネッセ教育総合研究所の調査で、0歳児の20%がスマートフォンをほぼ毎日見るということがわかりました。自分で良し悪しの判断のできない小さな子がスマートフォンに洗脳されてしまわないか、とても心配です。
感情の制御が苦手な人に成長してしまう可能性があるからです。小さいときは絵本を何度も読んであげることが一番だと思います。
スマートフォンに支配されるな
スマートフォンを使うのはいいのですが、「スマートフォンに使われてはダメ」。スマートフォンに支配されていないか。いつも自分に問うようにしています。僕はレストランや観る映画を決めるとき、それに本を買うときは、スマートフォンから情報を得て買わないようにしています。
インターネットに影響されて評判店に並ぶなんて、もってのほかと自分に言い聞かせています。店の雰囲気や漂う匂いで決めたり、新聞で映画館の広告を見て決めたり、書店で直接本を見て決めるようにします。
自分にとってとても大切な「食べる」「観る」「読む」は自分の感覚で決めようと思っているからです。SNS上で人気店だからご飯を食べに行く、ということはほとんどありません。
スマートフォンにさせる仕事は、できるだけ限定しておきたいと思っています。その理由は便利すぎるからです。自分で歯止めをかけておきたい。スマートフォンに使われるようになってしまわないように、スマートフォンに支配されたりしないように。スマートフォンを支配するのは自分です。
※『毎日が発見』本誌に連載した記事はこちら。
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1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』ほか多数。
(鎌田 實/KADOKAWA)
社会は人をだます。人も自分をだます。実は自分の身体すらも自分をだましにかかってくる。そんな環境に生きながらも、幸せに生きるためにはなにを知るべきか、どうすべきか、どう考えるべきか。医師にして作家である鎌田實が、その答えに迫ります。健康問題から社会問題まで、翻弄される人々の目覚めを促す言葉の劇薬!