背中の角質は0.2㎜ ごしごし洗いはNGです
冬になると背中が痛いくらいに乾燥してつらいという相談が増えます。お話を聞くと、ほとんどの原因は洗い過ぎです。まるで親の敵(かたき)のようにごしごしとこすっていませんか?
きれい好きな人ほど頻繁に洗う傾向にありますが、50代を過ぎたら背中を洗うのは週1回でいいのです。そうアドバイスすると驚く人が大勢います。まず皮膚が乾燥しているときはもちろん、普段からナイロンタオルやボディブラシで背中をこすり洗いするのはやめましょう。背中部分の角質はわずか0.2㎜しかありません。汚れをこそげ落とすつもりで摩擦すると、皮膚を守っている角質を傷つけてしまいます。
毎日お風呂に入るか、シャワーを浴びていれば十分に背中の汚れは取れています。ところが日本人の多くは、さらに体を洗っています。せっけんを使って毎日洗う部位は4カ所のみでOKです。
(1)雑菌がたまりやすい足、(2)陰部、(3)汗が出る脇の下、(4)同じく汗が出る首、特に耳やあごの下の部分です。この4カ所はよく泡立てたせっけんで洗います。背中や腕など他の部分は、お風呂のお湯やシャワーをあてるだけで、その日の汚れは十分に落とせます。気になるようでしたら週1回、せっけんの泡を手に載せて、なでるように背中に広げ、お湯で流します。こすらないように、力を入れないことがコツです。
保湿成分を作る美肌菌を大事に
腸に善玉菌と悪玉菌がいるように、皮膚の上にはいわゆる「美肌菌」と悪玉菌がいます。美肌菌は、ハンドクリームなどにも入っている保湿成分グリセリンに似た成分を作り、皮膚の潤いを守っています。美肌菌が多ければ悪玉菌が減り、肌トラブルは少なくなります。
ところが洗い過ぎると、悪玉菌だけでなく美肌菌も減ってしまいます。さらに必要な皮脂膜も壊してしまうので、皮膚から水分が蒸発しやすく、乾燥が進みます。時間がたつと美肌菌が増えて皮膚は潤いを取り戻しますが、また洗い流してしまうといつまでも乾燥が止まらなくなり、悪玉菌が増える原因となってしまいます。美肌菌を保つことも、乾燥を防ぐのに大事なことです。
取材・文/三村路子 イラスト/角しんさく
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工藤清加(くどう・さやか)先生
美容皮膚科医。六本木わかばクリニ ック院長。総合病院にて皮膚科、内科の研究を経て、現職。患者主体の丁寧な診察と分かりやすい価格設定をモットーに美と健康をサポート。著名人からの指名も多数。オリジナル調合のドクターズコスメの開発も。