還暦を迎えてなお、若々しく元気な南雲先生は、オメガ3という油を毎日とっている......。オメガ3は、健康への近道らしい。そう聞きつけて、お話しを聞いてきました。健康は足もとから。日常に欠かせない油を見直しませんか?
前の記事:「南雲吉則先生の「乳がん予防」(4)すべてのがん予防に共通するのは食生活」はこちら。
オメガ3の健康効果
● 脳卒中や心臓病の予防に
● 認知症の予防に
● ダイエットに
● 花粉症などのアレルギーに
● 美肌、美髪、美歯に
オメガ3には
細胞を若返らせるパワーがある
なぜいい油が必要なのでしょう?「油は体の大切な構成成分。脳の7割は脂質でできています。60兆個もある人の細胞膜も、コレステロールという脂肪です。明日の体は今日食べたもので作られますから、いい油をとらなければいけない」 南雲先生の言葉はシンプルでした。
「健康志向が高まってはいますが、現代人にはオメガ3という脂肪酸が足りていません。使い回して酸化した油や偏ったオメガ6のとり過ぎは、体内の炎症の元。炎症を繰り返すことで、がんをはじめとする病気になるのです」
α-リノレン酸が効く!
にわかに注目を浴び始めたオメガ3。私たちが今まで日常的にとってきた油といえば、サラダ油に代表されるオメガ6やオリーブオイルなどのオメガ9ですが、それらと何が違うのでしょう? 先生は次に、オメガ3だけに含まれる有効成分とその効果を教えてくれました。
「オメガ3にはα-リノレン酸が含まれ、体内でEPA(エイコサペンタエン酸)に変わります。これに抗凝固作用と抗炎症作用があるんです。つまり血液がさらさらになり硬くなった血管壁がしなやかになり、さらには傷ついた細胞がすみやかに生まれ変わるということ」 内臓も、肌や髪も若返って、あらゆる病気の予防になる! うれしいことばかりですね。
「他にも大きな3つの力があります。α-リノレン酸は体内でDHA(ドコサヘキサエン酸)にも変わりますが、これは動物界における精液や脳、目の網膜を作る成分。男性の精力アップ、子どもの学力アップやうつ病予防、高齢者の認知症予防、視力アップにつながります。
牛や馬はとうもろこしや大豆の絞りカスでできた飼料より、オメガ3たっぷりの牧草を食べたがります。生きるために、それが必要だということを知っているんですよ。アメリカでは、オメガ3をとった子どもとそうでない子どもの学力に、5倍の差が出たという調査結果もあります」
固まらないオメガ3。
火を通さずに生で!
私たちが身近で買えるオメガ3には、どんなものがありますか?
「えごま油のように寒い地方の植物から採れた油や変温動物、また青魚の油。サチャインチオイルなど、アマゾンの過酷な環境で育つ植物の油もあります。不飽和脂肪酸とも呼ばれ、気温や水温が下がっても固まりません。もし固まってしまったら、自然界の動物は血管が、植物は管が詰まって栄養が全身に行き渡りませんからね。 生でとりましょう。オメガ3は熱に弱いですから、火を通さずに」
加熱した油をとりたいときは?
「暖かい地方の植物や恒温動物の油を。例えば常夏の熱帯地方で採れる、最近人気のココナッツオイルやラードなどです。室温に戻すと固まるので飽和脂肪酸といいます。暖かい環境で採れたものですから、オメガ3とは逆に熱を加えても酸化しにくい。炒めものや揚げものをするときにいいでしょう」
生ならオメガ3。加熱するならココナッツオイルやラードなどの飽和脂肪酸。覚えておきましょう。
文/飯田充代 撮影/大崎 聡
南雲吉則(なぐも・よしのり)先生
1955年東京都生まれ。乳腺専門医、医学博士。東京慈恵会医科大学を卒業後、東京女子医科大学形成外科、癌研究会附属病院外科、東京慈恵会医科大学第一外科乳腺外来医長を経て、'90年に乳房専門のナグモクリニックを開業して総院長に。「バストの美容、健康、機能」をトータルケアする医療を実践している。著書に『大還暦〜60歳から本気で若返る100の方法』など。