毎週火曜、水曜更新!
「すぐにイライラしてしまう」「なんとなくモヤモヤする」...そんな「負の感情」との付き合い方に悩んでいませんか?
年齢を重ねれば誰もが感情のコントロールが難しくなるもの。「負の感情」をコントロールし、スッキリ生き生きと生きるために、脳科学や心理学の知見によって得られた効果のある実践的な方法を、書籍『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』から学んでいきましょう。
◇◇◇
前の記事「「頑固ジジイ」になってしまうのは前頭葉の衰えから/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(6)」はこちら。
前頭葉の働きがよくなれば腰痛や頭痛も改善する
ここで少し話が変わりますが、前頭葉の働きがよくなれば腰痛や頭痛も改善するという話をしたいと思います。
前頭葉は人の痛みにも大きな役割を果たします。たとえば慢性疼痛(とうつう)や頭痛、腰痛の緩和に大きな役割を果たすという説があります。これは、メイヨー医科大学精神科名誉教授であった丸田俊彦さんという日本人の精神科医(故人)が著した『痛みの心理学』(中公新書)という本に詳しく書かれています。
医学の世界では、「ペイン・クリニック(痛みの治療)」として、さまざまな分野の医師が「痛み」に対していろいろな治療を試みています。
薬など直接的な鎮痛を試みてもうまくいかないことがあります。
そういう患者さんに対して、たとえば、行動療法という形で、運動のプログラムを通じて痛みを和らげることもあります。
あるいは鎮痛剤依存のようになっている患者さんには、それを出すときに錠剤で出さずにわざとジュースに溶かして出すようにすることで、徐々に鎮痛剤から離脱させるといった方法をとって改善させることもあります。
こうした臨床経験から、丸田俊彦さんは、患者さんが同じ場所に痛みを感じ続けるのは、心理的な要因によるものだという結論を得ました。
傷みというものは慣れるものです。誰しもが経験のあることだと思いますが、深爪をしたときがそうでしょう。爪を切った直後はジンジンと痛みを感じるのに、ものの数時間も経てば痛みを忘れてしまいます。
また、鉛筆の先を手につき立てたときでもものの数分もすれば、痛みを感じなくなっていきますし、最初は違和感があったコンタクトレンズもすぐに慣れて、何も感じなくなっていきます。人は同じ刺激をずっと知覚していることはできないのです。
この考え方は基本的に腰痛や頭痛でも同じであるから、本来は痛みを感じないようにならなくてはおかしいというわけです。
にもかかわらず、なぜ痛みを感じてしまうのかというと、それは「気にしているから」だというわけです。
痛みという感情にずっととらわれている、つまり保続が起きているから痛いのだということです。ですから、これはまだ仮説ではありますが、前頭葉の働きがよくなればスイッチのON、OFFもうまくできるようになり、痛みが気にならないようになると考えられるのです。
実際、新宿ストレスクリニックという磁気刺激で前頭葉を活性化する治療でうつ病治療に効果を上げている病院では、別の当て方をすることで、痛みの治療にも大きな効果を上げているところだそうです。
次の記事「社会的成功に不可欠なEQ(心の知能指数)も前頭葉と深い関係がある!/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(8)」はこちら。
和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年、大阪府生まれ。精神科医。1985年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て独立。エグゼクティブ・カウンセリングを主とする「和田秀樹こころと体のクリニック」を設立し、院長に就任。国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)、川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。著書に『感情的にならない本』(新講社)ほか多数。
『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』
(和田秀樹/KADOKAWA)感情の不調は"脳"で治す! 医師にしてベストセラー作家が教える、誰でもできる習慣術。「笑い」を解放することが前頭葉を刺激する、「"こだわり"にこだわらない」がポイント、競輪競馬やゴルフ、マラソンの向上心は脳にいいなど、脳科学や心理学の知見によって得られた「効果のある」「実践的な方法」を一挙に紹介!