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「すぐにイライラしてしまう」「なんとなくモヤモヤする」...そんな「負の感情」との付き合い方に悩んでいませんか?
年齢を重ねれば誰もが感情のコントロールが難しくなるもの。「負の感情」をコントロールし、スッキリ生き生きと生きるために、脳科学や心理学の知見によって得られた効果のある実践的な方法を、書籍『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』から学んでいきましょう。
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前の記事「ショック! 40代から脳の萎縮が始まっている可能性も/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(5)」はこちら。
前頭葉が衰えると「保続」が起こる
前頭葉が萎縮することで、物事の切り替え、気持ちの切り替えが難しくなります。そのひとつの兆候が、俗にいわれる「頑固ジジイ」という現象です。
高齢者といわれる年代になると、柔軟性が失われていき、ひとつの考えに凝り固まってしまうことが珍しくありません。新しい考えを受け入れることができなくなるばかりか、気持ちの切り替えができず、ずっと怒りがおさまらなかったり、いつまでもクヨクヨと考えてしまうということが起こります。
こうした切り替えができなくなると、「頑固」と呼ばれるようになってしまいます。
私はこうした柔軟性が失われる現象も前頭葉の衰えによるものだと考えています。
というのは、前頭葉が壊れると、同じことを繰り返してしまう「保続(ほぞく)」という現象が起きるからです。
たとえば、私が認知症を患っている高齢者の人を診るときに、「今日は何月何日ですか?」と聞くことがあります。そうすると、「6月10日です」と正しく答えたとします。次に「誕生日は何月何日ですか?」と聞くと、「6月10日です」と同じ答えが返ってくることがあります。
今日が何月何日かわかっているということは理解力も保たれているし、記憶力もかなり良好だということを示しています。それなのに、次の質問には答えられないのは理解力ではなく、質問が変わったことへの「切り替え」ができていないことを意味します。
この切り替えができない現象が「保続」です。
このような保続は、脳が正常に働いている人にはまずおきません。起きる人のケースを調べてみると、前頭葉に脳梗塞や脳腫瘍があることがわかります。
しかし、前頭葉の機能が低下していると、そのようなはっきりした保続でない感情の保続のようなことが起こることがあります。
あることで悩んでいた場合、それが頭から離れない、ひとつの固定概念にとらわれてしまっているというのも、切り替えがうまくできていないということですから、ある種の保続と言えるかもしれません。これがイライラが続いたり、モヤモヤが晴れない、悲しみからいつまでも抜け出せないといったことにもつながります。
これまでこのような心の働きは、単にその人の性格であるとして片づけられてきました。しかし、私のような高齢者を専門とする精神科医の目から見れば、それも前頭葉の衰えという生物学的な要因によって起こっていると考えられるのです。
次の記事「前頭葉の働きがよくなれば腰痛や頭痛も改善する!?/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(7)」はこちら。
和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年、大阪府生まれ。精神科医。1985年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て独立。エグゼクティブ・カウンセリングを主とする「和田秀樹こころと体のクリニック」を設立し、院長に就任。国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)、川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。著書に『感情的にならない本』(新講社)ほか多数。
『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』
(和田秀樹/KADOKAWA)感情の不調は"脳"で治す! 医師にしてベストセラー作家が教える、誰でもできる習慣術。「笑い」を解放することが前頭葉を刺激する、「"こだわり"にこだわらない」がポイント、競輪競馬やゴルフ、マラソンの向上心は脳にいいなど、脳科学や心理学の知見によって得られた「効果のある」「実践的な方法」を一挙に紹介!