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「すぐにイライラしてしまう」「なんとなくモヤモヤする」...そんな「負の感情」との付き合い方に悩んでいませんか?
年齢を重ねれば誰もが感情のコントロールが難しくなるもの。「負の感情」をコントロールし、スッキリ生き生きと生きるために、脳科学や心理学の知見によって得られた効果のある実践的な方法を、書籍『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』から学んでいきましょう。
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前の記事「「奇跡の手術」から「悪魔の手術」になったロボトミー手術/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(3)」はこちら。
前頭葉が衰える3大リスクファクター
前頭葉が衰える原因には大きく分けて3つの要素があります。
1つめは、前頭葉を使わないことによるものです。
感情をうまくコントロールできるようにするためには前頭葉がうまく働いている必要があります。前頭葉は思考や意欲、感情、性格、理性といったものを司っているわけですから、この前頭葉がうまく働くにはこれらの要素を刺激することです。
刺激すると、前頭葉に多く血液が流れるようになります。これが「頭を使う」ということです。
体のどの部分も使っていればうまく動くようになり、使わなければサビついてうまく動かなくなります。
若い人でも腕や足を骨折した経験がある人ならば、しばらく動かさないでいると、腕が細ってしまったり、うまく歩けなくなったりすることを実感したことがあると思います。それが歳をとるほど顕著になります。
人間の体は使っても機械のように摩耗(まもう)することはなく、すべて使ってこそ能力が維持され、機能するようにできているのです。ですから、前頭葉を使うには「思考、意欲、感情、性格、理性」といったものを刺激する行動を行うことです。
2つめは、動脈硬化によるものです。
年をとると個人差はあれども、誰でも血管の弾力性が失われていきます。若いときはやわらかくてゴムまりのような状態でも、年をとると誰しも硬い古タイヤのようになっていきます。
こうした状態の血管にコレステロールが付着すると、血液が流れにくくなります。それが動脈硬化の状態です。
動脈硬化が起こると、脳にもうまく血液がいかなくなり、脳全体の機能低下が起こります。その中で当然、前頭葉にも問題が生じるようになり、自発性の低下や意欲の減退、「泣き出すと止まらなくなる」といった「感情失禁」という現象が起こりやすくなります。
誰でも血管は硬くなるので、動脈硬化は老化の一種と言えますが、生活習慣によって個人差が出ることは他の老化現象と同じです。
動脈硬化を促進させる危険因子として指摘されているのが、糖尿病とタバコです。このほかに高血圧、高コレステロール、肥満、ストレスなども挙げられます。
これらの危険因子を排除して、動脈硬化を防ぐことが前頭葉の機能を維持することにもつながります。
3つめは、セロトニン(神経伝達物質)の減少によるものです。
セロトニンの働きは、ほかの神経伝達物質であるドーパミン(喜び、快楽)や、ノルアドレナリン(恐れ、驚き)などの情報をコントロールして、精神を安定させることにあります。
セロトニンが減少することで起こってくる症状のひとつと考えられているのがうつ病です。他の分泌物質と同様に、セロトニンも歳をとるごとにだんだん減っていきます。ですから、高齢者のほうがうつ病になりやすいのです。若い人でもセロトニンが一時的に減ってうつ病の症状が出ることがあります。
セロトニンが減少することによって前頭葉の働きが悪くなり、うつ病とまではいかなくても、意欲が低下したり、イライラしたりといったことが起こるのです。
次の記事「ショック! 40代から脳の萎縮が始まっている可能性も/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(5)」はこちら。
和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年、大阪府生まれ。精神科医。1985年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て独立。エグゼクティブ・カウンセリングを主とする「和田秀樹こころと体のクリニック」を設立し、院長に就任。国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)、川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。著書に『感情的にならない本』(新講社)ほか多数。
『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』
(和田秀樹/KADOKAWA)感情の不調は"脳"で治す! 医師にしてベストセラー作家が教える、誰でもできる習慣術。「笑い」を解放することが前頭葉を刺激する、「"こだわり"にこだわらない」がポイント、競輪競馬やゴルフ、マラソンの向上心は脳にいいなど、脳科学や心理学の知見によって得られた「効果のある」「実践的な方法」を一挙に紹介!