「楽しい」「怖い」などの感情は大脳辺縁系で生まれている/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(2)

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「すぐにイライラしてしまう」「なんとなくモヤモヤする」...そんな「負の感情」との付き合い方に悩んでいませんか? 
年齢を重ねれば誰もが感情のコントロールが難しくなるもの。「負の感情」をコントロールし、スッキリ生き生きと生きるために、脳科学や心理学の知見によって得られた効果のある実践的な方法を、書籍『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』から学んでいきましょう。

前の記事「「イライラ」「モヤモヤ」してしまうは"脳"のせい!?/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(1)」はこちら。

感情は脳内の大脳辺縁系で生まれる

「では、感情はいったい脳のどこで生まれるのか?」と問われると、多くの人は答えられないのではないでしょうか。
人の感情が生まれる場所は、脳の中の大脳辺縁系と言われるところで、脳の真ん中あたりにあると考えられています。

大脳辺縁系とは、血圧、心拍数、呼吸器の調節、意思決定、共感、認知など情動の処理を行う「帯状回」、意識できない恐怖感、不安、悲しみ、喜び、直観力、情動の処理を行う「扁桃体」、目、耳、鼻からの短期的記憶や情報の制御をする「海馬」などから成り立っている脳の部分を総称したものです。

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この大脳辺縁系の外側に大脳新皮質があります。大脳新皮質は合理的で分析的な思考や、言語機能を司り、理性といったものもここでコントロールしています。人間などの高等生物が下等生物から進化していったときに新たに獲得した脳の部位なので「新皮質」と呼ばれているわけです。進化の歴史でいえば、脳は大脳辺縁系が先にでき、あとから大脳新皮質ができていったと考えられているのです。「楽しい」「怖い」「悲しい」といった本能的な感情は、大脳辺縁系が刺激を受けることによって生じるのです。

しかし、似たような感情でも種類の違う感情があります。
たとえば、「怖い」という感情一つをとってみても、「あの上司はすぐ怒るから怖い」というのもあれば、「高い場所が怖い」というのもあれば、「幽霊が怖い」というのもあるでしょう。このように同じ「怖い」という感情でもさまざまに意味の違うバリエーションをもたせているのが、大脳新皮質の働きです。

また、実際には同じ刺激を受けたのに人によって感じ方がそれぞれ違うということもあります。
たとえば、同じ「心霊写真」と呼ばれるものを見ても、怖いと感じ、ほとんど写真を見ることさえできない人もいれば、興味を持ってまじまじと見る人もいます。

これはどうしてかというと、最初に発生する「感情」は、その人が成長する過程において得られた経験や知識、教育などによってより心身に影響の大きな感情になったり、その逆でより小さな感情にもなることがあるからです。

つまり、大脳辺縁系で生まれる感情は発生時点では大きな個体差はなく、嬉しいときや怖いときといった感情の違いによる差もそれほど大きな差はないだろうと考えられていますが、それがさまざまなバリエーションをもったり、感情の大きさが違ってくるのは、それぞれの大脳新皮質の反応が個々人で異なるからなのです。

大脳新皮質の大きな特徴は、感情に対する理性の発達が異なるから、そうした差を生みだすもとになるということです。

人間は動物と違って、怒っているからといってすぐに暴力に訴えることはありません。つらいことがあっても泣くのを我慢したり、相手が怒ったり悲しむとわかっているときは言いたいことを言わないでおくということもできます。

こうした表情に表れる態度は他の動物よりも人間がとくに優れています。人間(というか人類)が群れで生活するようになったときから、こうした社会性を発達させていく段階で大脳新皮質を進化、獲得していったに違いありません。

でも、そうした社会性の箍(たが)が外れるときがありますね。そうです、たとえばお酒を飲んだときです。
アルコールは人体にとっては強い刺激物になりますので、量によっては脳のあらゆる部分を麻痺させます。

たとえば、大脳新皮質が麻痺すると、理性がきかなくなって、たとえば居酒屋で日ごろ思っていた会社の不満をぶちまけてしまったり、好意を寄せている異性に告白してしまったりします。
さらにアルコールを摂取していくと、大脳辺縁系にも麻痺が生じてきます。運動機能や記憶能力といった動物が生命を維持するのに最低限必要な基本的な能力が奪われていきます。だから、千鳥足になったり、「家までどうやって帰ったか記憶がない」ということが起こるのです。

いずれにせよ、感情は「大脳辺縁系で生まれ、大脳新皮質によって味付けされている」と言えます。
大脳新皮質は「人間らしさ」を形づくる大切な役割を果たしているのです。ですから、この本で問題にしている、「なんだかイライラする」「モヤモヤが消えない」という感情は、大脳新皮質になんらかの問題があると言えるのです。

ということは、大脳新皮質の状態を改善することができれば、こうした感情ともうまく付き合っていくことができるということです。

 

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和田秀樹(わだ・ひでき) 

1960年、大阪府生まれ。精神科医。1985年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て独立。エグゼクティブ・カウンセリングを主とする「和田秀樹こころと体のクリニック」を設立し、院長に就任。国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)、川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。著書に『感情的にならない本』(新講社)ほか多数。

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『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』

(和田秀樹/KADOKAWA)

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この記事は書籍 『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』からの抜粋です
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