私たちの会話が早送り(2倍速以上)で聞こえているといわれています
認知症が進むと、言葉を理解したり発したりする脳の領域が衰え、話を理解するのが苦手になります。
これも、「失語」の症状の一つです。
認知症の人は、人の言葉がビデオの早送りのようになり、言葉が連続してつながって聞こえているといわれています。
また、複数の情報を同時に理解することも難しくなっています。
このような状況は、海外に行って周囲の人がみな外国語をしゃべっているという状態を思い浮かべると想像しやすいと思います。
周囲の人と言葉が通じない......しかも、その相手が家族だとしたら、その不安はとても大きなものです。
特に、複数の人の会話についていくのは困難です。
ご本人は、それでもなんとか話を理解しようと気持ちを集中させてがんばるため、とても疲れてしまいます。
こうしたことから、認知症の人に話を伝えるときは、私たちがふつうに話すスピードでは理解できないことがあるので、まずはゆっくりと話すことが原則です。
また、会話に含まれる情報量を少なくするのもポイント。
具体的には、(1)句点(、)と読点(。)を意識する、(2)わかりやすい単語で話す、(3)短い2、3語の言葉で伝える、という3点を意識してください。
マンガの例でいえば、ご本人には「明日、外で、食べよう」と、重要なことだけを、ゆっくりと短い言葉で伝えるとよかったと思います。
また、認知症の人と話すときは、不安を感じさせないよう、優しく豊かな笑顔で話すことも大切です。
認知症の人は、言葉の理解が苦手になっても、周囲の人の感情にはとても敏感で、人の表情や声の調子がとても気になっています。
言葉が聞き取れなくても、周囲の人が「どうしたのかしら」と不審な表情を見せたり、棘のある態度を取ったりすると、認知症の人はそれを察してますます不安になってしまいます。
認知症の進行を防ぐには、ご本人の気持ちを考え、人とのコミュニケーションをできるだけ維持することが大切です。
対応のポイント
●言葉の句点や読点を意識して区切り、ゆっくりと落ち着いて話すようにしよう。
●2、3語ほどで、簡単な言葉で伝わるように話そう。
●不安を助長しないように、優しく豊かな表情で話すことを心がけよう。
【次回】お母さん、なんで着替えないの!?/認知症の人が見ている世界
認知症ケアに携わってきた著者が、実際に接してきた中で気づいたケーススタディがマンガでわかりやすく解説されています