奈良県吉野山の山道48㎞を16時間かけて歩き、それを1,000日間、足かけ9年にわたり続ける修行が「大峯千日回峰行(おおみねせんにちかいほうぎょう)」です。その厳しい行(ぎょう)を完遂した塩沼住職に、前向きな気持ちになれるという「歩行禅」について聞いてみました。
回峰行を下敷きに塩沼住職が編み出したのが、心を整える「歩行禅」です。
「歩行禅は、歩きながら瞑想をし、その後に坐禅を組む3ステップの『心のエクササイズ』です。約2,500年前にお釈迦様は『同じことを同じように繰り返していると、悟る可能性がある』とおっしゃいました。歩行禅も毎日続けることが大切です」。
正しい立ち方が「歩行禅」の基本
「歩行禅に入る前に、正しい立ち方を学ぶことが大切です」と塩沼住職は言います。ポイントは、(1)腹筋に軽く力を入れて下腹をへこませる、(2)左右の肩甲骨を自然に寄せて胸を張る、(3)腰は丸めず反らせず真っすぐに、(4)左右均等に重心を置くことです。この状態から歩き出します。
「大変そうに思えても、やってみると簡単な手順ばかり。まずは細かいことは気にせずに、体を動かすことで『こういうことか』と腑に落ちるはずです」と塩沼住職はすすめています。
歩行禅の三つのステップ
ステップ1【懺ざんげ悔の行】
リズムよく歩きながら、自分の犯した過ちや失敗、反省すべきこと、謝らなければいけないことを全て洗い出しながら「ごめんなさい」と唱える。
ステップ2【感謝の行】
歩きながら、自分を支え生かしてくれている、ありとあらゆる縁と存在に思いをはせる。心の中で「ありがとう」と唱えながら、思いつく限りの感謝をする。
ステップ3【坐禅の行】
静かに落ち着ける場所で、瞑想に入る。あぐらを組み姿勢を正し、呼吸はゆっくり鼻から吸って、口から吐く。いまの自分に与えられた環境と縁、自分が置かれている状況に思いを巡らせ、5〜10分ほど坐禅を続ける。静かに目を開けて終了。
●毎日行う
ステップ1〜3は「三つで1セット」。時間はバラバラでもいいので、できる限り毎日行いましょう。
●歩くのはどれくらいの時間?
15分以上のウォーキングが理想ですが、5分足らずの短い時間でも問題ありません。
【懺ざんげ悔の行】と【感謝の行】のポイント
【坐禅の行】のポイント
あぐらの組み方はどちらでも!
右足の甲を左ももの上に、左足の甲を右ももの上にのせる正式な坐禅。
あぐらを組んで、片方の足の甲をもう片方の太ももにのせる略式の坐禅。
『歩くだけで不調が消える歩行禅のすすめ』
(塩沼亮潤/KADOKAWA)
塩沼住職が千日回峰行で得た悟りとは? 歩行禅のコツや1日5分の「小さな修行」の具体的な方法とともにつづった一冊。
塩沼亮潤(しおぬま・りょうじゅん)住職
1968年宮城県生まれ。吉野山金峯山寺で出家得度。99年、吉野・金峯山寺1300年の歴史で2人目となる大峯千日回峰行満行。現在、仙台市秋保・慈眼寺住職。大峯千日回峰行大行満大阿闍梨。