喉は呼吸をしたり、食べ物を飲み込んだり、生命維持に大切な場所です。そのため、喉の力は衰えにくいのですが、それでも年齢を重ねると足腰が衰えるように、喉の筋力や神経の働きも徐々に低下してきます。早い人では40代から喉仏の位置が下がり、50代で飲み込むときに違和感を覚えるようになり、60代 では喉仏の下がりが目立って飲み込みづらさを感じるようになります。食事中にむせるなどは、喉の力が衰えているサインです。
喉の筋力が衰えてくると大事に至ることもある
喉仏の上には喉頭挙上筋群という筋肉があり、食べ物を飲み込もうとしたときにタイミングよく喉を2~3cmせり上げます。喉仏が上がると気管のフタが閉じられ、食べ物は食道に送り出されていきます。健康な人は食べ物を飲み込む一連の複雑な動きを0.5~0.8秒で行っていますが、喉頭挙上筋群の力の低下などがあると、飲み込みのタイミングはちぐはぐとなり、食べ物が気管へ入りやすくなってしまいます 。
食べ物や水分が気管に入ると反射が起こり、むせて吐き出そうとします。もし吐き出せないとそこに炎症が起こります。体力・免疫力があれば、また適切な治療を受ければ、気管支炎程度で済みますが、間違って飲み込んだものの種類と本人の体力によっては肺炎となり、いわゆる「誤嚥性肺炎」となって命に関わります。
あなたは大丈夫?飲み込む力が低下しているサイン10 セルフチェック
1 食事中にむせたり、咳込んだりする。
2 生ビールのジョッキなど、上を向いて飲み物をごくごく飲むとむせる。
3 薬やサプリメントの大きな錠剤が飲みにくくなった。
4 以前より、ものを食べるのが遅くなった。
5 食事中や食後に、喉がゴロゴロする。
6 食後にガラガラ声になったり、 声が小さくなる。
7 鏡を見ると、喉仏が「首の半分より下」の位置にある。
8 「前よりも声が小さくなった」と言われた。
9 歩くスピードが遅くなった。
10 運動らしい運動はまったくしていない。
一つでも当てはまったら要注意。自分の飲み込む力を過信せずに、喉の体操を。
次の記事:「単に「むせている」と思ったら大違い。気づかずに悪化しているケースも/見逃さないで、未病のサイン(2)」はこちら。
西山耕一郎(にしやま・こういちろう)先生
医学博士、西山耳鼻咽喉科医院理事長。東海大学客員教授、藤田保健衛生大学客員准教授。1957年生まれ。 北里大学医学部を卒業後、 北里大学病院や国立相模原病院、横浜日赤病院、国立横浜病院などで研鑽を積む。 著書に『肺炎がいやなら、 のどを鍛えなさい』(飛鳥新社)など。