酷暑といわれる夏を乗り切ったころには、体力が奪われて食欲がないことがありますね。真夏の環境に適応できないと、自律神経が乱れて食欲不振にもなります。食べないと体力の消耗は激しく、体がだるい、やる気が起きないなど、心身の不調につながるのが夏バテです。でも、暑い環境は自分で変えることはできません。加えて、「あっさりしたものを少なめに食べると、ダイエットにもなる」と考える人がいます。この状態を放置した先に待つのが「低栄養」状態。実は、とっても危険です。
痩せている人のほうが太っている人より死亡率高し!
「私たちの長年行っている疫学調査(ある集団を対象に行う追跡調査)では、太っている人より瘦せている高齢者の方が、追跡調査の8年後には、死亡率が高くなっていました。低栄養状態によって、死亡の危険度は1.5倍も高くなっていたのです。要介護になるのも、瘦せている人の割合が高いとの結果でした」と話すのは、東京都健康長寿医療センター研究所副所長の新開省二先生。この疫学調査における「瘦せている人」は、体格指数(BMI=体重㎏÷身長m×身長m)で「20以下」の人です。一般的に病的に瘦せているといわれるのは「18.5」以下ですが、低栄養状態は、「20」以下で起こっていると考えられるのです。身長1.55mの人の場合は、体重49㎏未満になると「瘦せている人」になります。食欲不振を放置しないようにしましょう。
「低栄養」、知っていますか?
はっきりした定義はありませんが、健康な体を維持するために必要な栄養素が足りない状態(病気の名前ではありません)をいいます。
【推定数】
‣65歳以上の約15%
‣80歳以上の約30%
【なりやすい人は?】
‣高齢期(65歳以上の人)
‣食べる量が年々減少している
‣ダイエット、太り過ぎを気にして少食
‣健康情報をうのみにする
可能性があるのは?...目安となるのはBMIの数値20以下の人、または血中アルブミン値が4.0以下の人
【原因は?】
‣食べる量が不十分
(噛む力の低下、嗜好の変化による。病気が潜んでいることも)
‣体力の低下→外出しない→食欲の低下から
‣食事の時間が不規則、または回数が減少する
‣誤った知識("粗食が健康に良い"など)
‣さまざまな要因が悪循環を引き起こす
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新開省二(しんかい・しょうじ)先生
東京都健康長寿医療センター研究所副所長。医師・医学博士。日本老年医学会や日本公衆衛生学会などの評議員、厚労省「健康日本21(第2次)策定専門委員会」委員などを歴任。