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健康であるためにはどうしたらいいのか? セルフメディケーションの時代と言われる今、私たちもそれなりの健康常識は身につけておく必要があります。
病気というものをどうとらえるか、医者との付き合い方、 病気にならない考え方――。ほかにも、食事の摂り方、ストレスの対処の仕方、あるいはダイエットを成功させるコツな ど、明るく元気に毎日を過ごしてもらえる有益な情報を連載でお届けします。今の生活をもう一度見直し、自己治癒力を高めるスキルを学びませんか?
心身を休めないと細胞の修復は行なえない
前項で触れたメラトニンですが、これは眠りをうながすホルモンです。脳の奥深くにある視交叉上核と呼ばれる部分に、分泌量を調整するスイッチがあります。メラトニンは日中の明るいうちはほとんど分泌されず、暗くなると分泌量が増え、体温が下がって眠りやすい体内環境を作ります。
朝目覚めてすぐ、20分ほど太陽の光を浴びると、光に反応した視交叉上核から松果体という部分に、メラトニンの分泌量を減らすよう指令が出ます。太陽光を浴びてメラトニンの分泌量が減ると、地球の自転より1時間ほどズレている周期が、24時間に修正されます。メラトニンの分泌量が増えはじめるのは、その15時間後くらいからです。午前6時に起きる人なら、午後9時くらいから眠くなるというわけです。
生体リズムにかかわるメラトニンは、自律神経系の働きにも影響を与えます。交感神経が優位になるのはメラトニンの分泌量が少ない日中で、体は外界からの刺激に即応できるよう活動モードになります。
これに対して副交感神経は、メラトニンの分泌量が増える睡眠中や、リラックスしているときに優位になります。すると、「アセチルコリン」という神経伝達物質が分泌されて、心拍数、呼吸数が減り、血圧も下がります。さらに、血管が拡がるので血行もよくなり、傷ついた細胞の修復や、タンパク質の代謝が進みます。
注目すべきは、この細胞修復とタンパク質の代謝です。
細胞は、活性酸素に攻撃されると老化が進みます。細胞のなかには遺伝情報を収めた核があり、細胞が傷つくと遺伝子にも狂いが生じてきます。つまりAであるはずの遺伝子がA´といういびつな遺伝子になり、そのまま放置されることで異常な細胞が複製され、やがてがん細胞へと成長してしまいます。
がん細胞は毎日、何千個も生まれていますが、それが成長してがんを発症するか、それとも消えていくかの違いは、眠っている間の修復作業にかかっているのです。
岡本 裕先生(おかもと・ゆたか)
1957年大阪生まれ。e-クリニック医師。大阪大学医学部、同大学院卒業。卒業後12年あまり、大学病院、市中病院、大阪大学細胞工学センターにて、主として悪性腫瘍(がん)の臨床、研究にいそしむ。著書に『9割の病気は自分で治せる』『9割の病気は自分で治せる2【病院とのつき合い方編】』『9割の病気は自分で治せる【ストレスとのつき合い方編】』(以上、KADOKAWA)、『22世紀。病院がなくなる日』(飛鳥新社)など多数。
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(岡本 裕/KADOKAWA)
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