定年後の生き方を決めるための「自分セレクト」のすすめ【大学教授・齋藤孝さんが解説】

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『60代からの知力の保ち方』 (齋藤孝/KADOKAWA)第8回【全10回】

人生100年時代、60代は新たなスタートラインです! そんな大切な時期をいきいきと過ごすための、頭と心のコンディショニング法を紹介しているのが大学教授・齋藤孝さんの著書『60代からの知力の保ち方』(KADOKAWA)。本書は日々のちょっとした習慣を通して、60代からの知力を無理なく、そして楽しく保つ方法を優しく解説します。「まだまだこれから!」という意欲を応援し、後半生をより豊かにするためのヒントが満載です。60代は、これまでの役割が変わり、自分を見つめ直す時期。脳と心と体をバランス良く整え、知的な活力を高めていきませんか?

※本記事は齋藤孝著の書籍「60代からの知力の保ち方」から一部抜粋・編集しました。

「自分セレクト」で自分を知る

健康社会学者の河合薫さんは、著書『定年後からの孤独入門』(SB新書)で、「今こそ自己実現のスイッチを押すときだ」と言っています。自分がどうありたいか、どう生きたいかを決める価値観を「意志力」だと規定しています。そのうえでこう述べます。

「意志力とは自己認識であり、自分を知ることで具現化できる」

河合さんは自分を知る方法として、自分史を書くことをすすめています。

私は「自分セレクト」を挙げたいと思います。自分の好きなものを選ぶというある意味単純な方法ですが、これが案外自分を知ることにつながるのです。

『心を軽やかにする小林一茶名句百選』(致知出版社)という本を出したことがありますが、百句を選ぶために、全集を横において約二万句を読みました。

百句から十句を選ぶのではなく、二万句から百句選ぶというところがミソです。採用確率は200分の1! 気分は藤原定家、百人一首の編纂のようなものです。これほどの量から選んでいると、自ずと好みがはっきりわかります。一茶に詳しくなくても、大量の句を読むことで、自然と選句眼が養われるというものです。

また、月刊誌「文藝春秋」から、好きな昭和の歌謡曲を三曲選ぶというアンケートの依頼がきた際、私は大変悩みました。どれを入れたらいいか難しい選択を迫られ、迷った末に、「石狩挽歌」「ヨイトマケの唄」「木綿のハンカチーフ」の三曲を選びました。

ドラマ性のあるものを選んで理由を書くうちに、私は自分がこんなに昭和歌謡が好きだったんだなと改めて気づかされました。

私は歌詞が好きなタイプなので、阿久悠も入れたい、松本隆さんも入れたいと思い悩み、いろいろな曲を聞き返したのですが、この時役立ったのが、YouTubeや、各音楽会社のサイトです。私はもともと一日二時間も費やすほど動画の視聴時間が長く、次から次へと見るのですが、この技を駆使することで、本当に貴重な音源にも出会いました。

スマホやⅰPadは、年齢がいった時のための"魔法の板"。大変役に立ちます。テクノロジーを忌避するのはもったいない。昔を懐かしむためにも有用な道具です。

名句を選ぶ、歌謡曲を選ぶことは、自分自身の感情と歴史を整理することにつながります。狭くなりがちな興味関心を、広く維持することにも役立ちます。

好きな本三冊、もしくは人生の恩師や先輩の言葉などでもいいのです。これまでの自分が試したことのない挑戦や、これまでの自分の掘り起こしにトライしてみてはいかがでしょうか。

 
※本記事は齋藤孝著の書籍「60代からの知力の保ち方」から一部抜粋・編集しました。

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