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血糖値を上げない食べ方を実践しましょう!
1 空腹を十分に感じてから食べる
朝昼晩の3食をきちんと間隔を空けて、空腹を感じてから食べるようにします。できれば家事や仕事に合わせて食事を二の次にせず、健康のために食事の時間を最優先に考えましょう。空腹を感じることは、胃、腸、肝臓をはじめとするさまざまな器官に「さあ動き出せ!」という刺激を伝えるホルモンを分泌させるきっかけになります。そのためにはおやつや間食は控えめにしましょう。
2 早食いはせず、食事はゆっくり30分以上かける
食べる量やスピードに合わせて、胃や腸は文句も言わずに働いています。早食い、大食いは「腸の疲れ」を引き起こします。腸の疲れは便秘や下痢を引き起こし、腸内環境を悪化させて、肥満、メタボ、糖尿病、がんなどの発症や老化にもつながります。食事は30分以上かけて、よくかんでゆっくり食べることで、消化や代謝に必要なホルモンも正常に分泌されて、食べ過ぎや血糖値の急上昇を防ぐことができます。
3 適正な摂取カロリーを知ろう
食事量を30%減らしたサルは、好きなだけ食べさせたサルに比べて、毛並みが良く寿命も長いことが報告されました。他の動物実験でもインスリンが多い状態が続くと寿命が短くなることが分かっています。食べ過ぎないためにはぜひ自分の体に必要な適正摂取カロリーを知りましょう。適正な摂取カロリー量(エネルギー量)は身長と体重、生活習慣から計算することができます。
4 食後には散歩などをして軽めに体を動かす
食後に食休みとして長時間横になったり、体を動かさずにいたりすると、糖分がいつまでたってもエネルギーとして利用されないため、血糖値が下がりません。「食べてすぐ横になるとウシになる」と肝に銘じて、食後の散歩に出かけたり、家事をこなしたりして、体を動かすようにしましょう。ただし、糖尿病の薬を飲んでいる人や、食後の運動で立ちくらみなどを感じた人は、医師に相談してから食後の運動を始めてください。
5 食べるときは楽しく
子育てが一段落して、夫婦がそれぞれの予定に合わせて生活し始めると、一人で食事をすることが多くなるものです。一人で食べるとどうしても、食事の内容は簡単なものになり、食材のバリエーションも乏しくなります。また早食いになったり、大食いになったり、孤独を感じて料理のおいしさを感じなくなったりしてしまいがちです。行儀を気にせず、テレビやDVDを見て笑ったり、ひとりごとをつぶやいたり、新聞・雑誌を読みながらでもいいので楽しく時間をかけて食べましょう。
構成/高谷優一 取材・文/宇山恵子
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伊藤 裕(いとう・ひろし)先生
慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授。京都大学医学部卒。専門は高血圧、糖尿病、腎障害、抗加齢など。ホルモン分泌のメカニズムにも詳しい。最新刊(監修)は『糖尿病は先読みで防ぐ・治す』(講談社)。