日本社会は長らく、終身雇用や年功序列といったオリジナルの価値観のもと、従業員は「組織の歯車」であることがよしとされる風潮がありました。会社に正社員として入社し、生活の保証と引き換えに会社に尽くすという考え方がある一方、「働き方改革」や「ワークライフバランス」に代表されるような個人を尊重する考え方も定着してきました。新しく社会人となった若者たちが理想とする会社像について見ていきましょう。
年功序列より成果や実力で評価されたい新人たち
社会にはばたく若者たちの希望する職場環境とは、いったいどのようなものなのでしょう。一般社団法人日本能率協会が、新入社員向け公開教育セミナーの参加者352人を対象におこなった仕事や働くことへのアンケート調査によると、実力・成果主義の職場を望むか、年功主義の職場を望むかという問いには「実力・成果主義」が19.0%、「どちらかというと実力・成果主義 」が46.0%となり、実力・成果主義の職場を望む人は全体の6割以上となりました。
※一般社団法人日本能率協会調べ(以下同)
その一方、プライベートを優先したいか、仕事を優先したいかという質問には、「プライベート」が24.1%、「どちらかというとプライベート 」が51.7%となり、仕事よりプライベートを優先したい新入社員が8割近くとなる結果に。
仕事にやりがいを求め、実力でのしあがっていきたいと考える反面、自分のプライベートな時間にも重きをおきたいという、現代新入社員の思いが浮かび上がる結果となりました。
家庭と両立をめざし、企業の社会貢献も重視する
プライベート面で大切なことといえば、やはり仕事と家庭の両立です。結婚や育児などが関わってくるシーンにおいて、仕事への思い、スタンスは変わっていくのでしょうか。
まずパートナーとなる人への気持ちではなく、自分自身の考えについて聞いたところ、全体では、「仕事を続けたい」(50.9%)、「続けられる環境があれば続けたい」(38.9%)と、約9割が仕事を続けたいと答えています。
将来の育児と仕事について、パートナーとなる配偶者(妻・夫)に望むことをたずねたところ、男性は「仕事を続けてほしい」(9.5%)、「続けられる環境があれば続けてほしい」(42.3%)となり、両者を合計すると5割以上が「仕事と家庭の両立」を望んでいることがわかります。女性では、「育児に専念してほしい」と答えた人はわずか0.9%で、9割以上の女性は夫に仕事を続けてほしいと希望しています。
さらに、時代のキーワードとなるのが企業の社会性。このところ、単なる利益優先の企業よりも、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の要素から、どれだけ社会に貢献しているかを企業の価値と考えるESGが投資の面からも注目を集めています。
今回のアンケートでも、働いている会社が社会の役に立っているかが「とても重要だと思う」「やや重要だと思う」と答える新入社員は9割超となりました。
ESGは女性社員の活躍なども指標となる場合が多いですから、家庭やプライベートを大事にする彼らの信条にもあっているのかもしれませんね。いずれにせよ、これまでの日本的な雇用の尺度では測れない面が、今後も重要視されていくのではないでしょうか。
文/本山 ことま