【相談】
先日、私と同居していた母が亡くなりました。土地と建物は母名義で、同居していた私が相続することとなったのですが、相続登記は必要でしょうか? 母の相続人は私と弟のみで、私と弟には、共に配偶者がいて子どもが2人ずついます。(女性65歳)
小脇先生の【お答え】
相続登記は、円満な相続のために、行うべきものです。相談者の場合、将来的に争いとならないように、特に速やかに行っておいた方がよいでしょう。
土地や建物などの不動産を相続したときに、法務局(登記所)で、「登記簿」にその不動産が自分の持ち物であることを記録してもらう手続きを「相続登記」といいます。登記の際には、不動産の評価額に応じた登録免許税を支払う必要があります。
相続登記は義務ではありませんから、すぐに行わなくても罰せられることはありません。しかし相続登記をしないと、他人に対して「自分の不動産です!」と主張することができません。将来的に土地や建物を売却したり担保に入れたりすることになった場合には、手続きの前提として相続登記が必要となります。
また今後、何回かにわたって相続が発生してしまった場合には、手続きが煩雑になり、「増え過ぎた関係者の同意をとれない」「連絡がつかない」などの理由で、手続きが非常に困難になってしまうこともあります。
相談者のケースで、もし口約束だけで登記をせずに放っておいている間に相談者と弟が亡くなったとします。その後、土地建物は相談者の長男が取得することになった場合でも、相続登記手続きの際には、土地建物は「母→相談者→長男」という流れで相続したことを、弟の妻・おい・めいに、亡弟の代わりに証明してもらう必要があります。もし、お母さまが亡くなった時点で相続登記をしておけば、あなたの夫とお子さんの関与だけで、相続登記ができたのにです。
円満な間柄であれば問題なく手続きが行えるでしょうが、疎遠であれば関与を拒まれたり金銭的な要求(判子代)をされたりすることも少なくありません。そうなって初めて、「あぁ...ちゃんと登記の手続きをしておくべきだった」となるわけです。
地方などでは、何十年何代にもわたり相続登記を放置されることで、所有者不明土地問題も深刻な社会問題になっています。誰も管理しないため土地が荒廃し、公共事業の停滞の原因の一つになることもあるようです。
現在、全国の所有者不明土地の合計面積は九州を上回る規模で、今後ますます広がっていくと予想されています。相続登記は手間がかかり、気軽に行える手続きではありません。登録免許税や司法書士に依頼すると費用もかかるため、後回しにしてしまうことも多いかと思いますが、早めの手続きをおすすめします。
小脇 盛(こわき・しげる)先生
東京司法書士会所属、司法書士小脇事務所所長。個人からの依頼による相続や遺言の相談をはじめ、不動産登記・商業登記や債務整理から成年後見まで幅広い案件を担当している。