『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』 (河野純子/KADOKAWA)第6回【全10回】
「人生100年時代は、まず女性にやってきます」──そう語るのは、女性向け求人誌「とらばーゆ」元編集長で、現在はライフシフト・ジャパンの取締役CMOを務める河野純子さんです。一般的に60歳は定年とされていますが、人生100年時代においては、それは人生の一つの転換点に過ぎません。その後の40年を「楽しく働き、自由に生きる」ことが重要だと河野さんは言います。『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)は、60代以降、好きな分野で小さな仕事を立ち上げ、90歳まで続けるために必要な心構えや準備についてまとめられた一冊です。今回は、この本の中から、会社や家族のためではなく、自分の人生を生きるために知っておきたい情報やスキルを抜粋してご紹介します。
※本記事は河野 純子著の書籍「60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし」から一部抜粋・編集しました。
特別なスキルがなくてもライフシフトできる
「雇われない働き方」へシフトする必要性や魅力はわかったけれど、自分には特別なスキルも経験もないから難しそう......。ここまで読んでそう思っている人もいるかと思います。でもそんなことはありません。私たちには「時間」という強い味方がついています。
いまこれといった特技を持っていないと思うのであれば、これから学べばいいのです。これから私たちを待っている30年間という時間は、新たに何かを学び、それを活かした仕事をしていく時間として十分なものです。これから好きなことを存分に学べる。学ぶことで私たちは何者にでもなれる。そう考えるとなんだか学生時代に戻ったようなワクワクした気持ちになりませんか? しかも学生時代よりも人生経験を積み、社会を知り、自分のこともわかっています。より自分らしい道を選べるはずです。これが、これから30年のほうがより楽しく、自分らしく働ける理由です。
実際に、50代以降で新しいことを学んで、会社員から全く未経験の分野で起業した人(自分で事業を始めた人)はたくさんいます。日本政策金融公庫総合研究所の「シニア起業家の開業」(2012年)を見ても、22・6%の人が経験のない領域で起業を実現しています。5人にひとりですから、結構な割合です。
例えば大手IT機器メーカーで営業部長を務めていた藤田巖さんは、45歳のときに受けた「セカンドキャリア研修」をきっかけに、定年後に情熱を傾けられる「何か」を探しはじめました。そして50歳のとき、新聞記事で「福祉美容」に出合います。医者でも治せず寝たきりだった高齢者が、ヘアメイクで笑顔になり、また歩けるようになったという記事に感動したのです。これだ! と心が動き、働きながら6年かけて通信教育で美容師免許を取得。58歳で定年退職後、2年間のインターンを経て60歳で福祉美容院を開業したのです。
インタビュー時は77歳、まだまだ現役で美容師を続けていらっしゃいました。学びに10年かかりましたが、その後17年活躍していますから、十分に投資回収できています。「これからもできるだけ長く高齢者の笑顔のために頑張りたい」と語る藤田さんは、まさに人生100年時代のロールモデルだと思います。