『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』 (河野純子/KADOKAWA)第3回【全10回】
「人生100年時代は、まず女性にやってきます」──そう語るのは、女性向け求人誌「とらばーゆ」元編集長で、現在はライフシフト・ジャパンの取締役CMOを務める河野純子さんです。一般的に60歳は定年とされていますが、人生100年時代においては、それは人生の一つの転換点に過ぎません。その後の40年を「楽しく働き、自由に生きる」ことが重要だと河野さんは言います。『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)は、60代以降、好きな分野で小さな仕事を立ち上げ、90歳まで続けるために必要な心構えや準備についてまとめられた一冊です。今回は、この本の中から、会社や家族のためではなく、自分の人生を生きるために知っておきたい情報やスキルを抜粋してご紹介します。
※本記事は河野 純子著の書籍「60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし」から一部抜粋・編集しました。
転職しても給与はダウン
確かに50~60代の転職市場は男女問わず厳しいものがあります。厚生労働省の「転職者実態調査」(2020年)で転職後の給与の変化をみてみると、40代後半まではアップした人のほうが多いのですが、50代前半以降はダウンした人のほうが多くなっています。アップした人からダウンした人を引いた比率は、40代後半は7・2%ですが、50代前半でマイナス26・2%、50代後半でマイナス17・8%、60代前半でマイナス46・6%、65歳以降でマイナス50・3%となっています。また転職後の雇用形態をみると50代前半までは70%以上が正社員ですが、50代後半になると正社員比率が57・7%に下がり、契約社員などが増えていきます。60代前半の正社員比率は37・8%、65歳以上は16・7%です。
体験者からも「年齢の数だけ履歴書を出せと言われて頑張ったけれど面接までたどり着けたのは数社のみ」「希望に合う仕事が見つからなかったので転職をあきらめた」という声が聞こえてきます。
データからも体験者の声からも厳しい現実が見えてきますが、全く可能性がないわけでもありません。1つ言えることは動くなら早く、ということです。先ほど、60歳の定年後に継続雇用を選ぶ人が87・4%という数字を紹介しましたが、これは動く人はもっと早く動いていて、動かず会社に残った人を対象とした調査なので高い数字が出ているともいえます。50代転職者の60代になってからの仕事満足度を調べた調査では、50代前半に転職した人は52・6%が満足と回答しているのに対し、50代後半は40・3%に落ちています(「全国就業実態パネル調査2019」リクルートワークス研究所)。転職するなら40代後半~50代前半に、ということになるでしょう。