『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』 (河野純子/KADOKAWA)第4回【全10回】
「人生100年時代は、まず女性にやってきます」──そう語るのは、女性向け求人誌「とらばーゆ」元編集長で、現在はライフシフト・ジャパンの取締役CMOを務める河野純子さんです。一般的に60歳は定年とされていますが、人生100年時代においては、それは人生の一つの転換点に過ぎません。その後の40年を「楽しく働き、自由に生きる」ことが重要だと河野さんは言います。『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)は、60代以降、好きな分野で小さな仕事を立ち上げ、90歳まで続けるために必要な心構えや準備についてまとめられた一冊です。今回は、この本の中から、会社や家族のためではなく、自分の人生を生きるために知っておきたい情報やスキルを抜粋してご紹介します。
※本記事は河野 純子著の書籍「60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし」から一部抜粋・編集しました。
「雇われない働き方」につながる転職を
これから転職を考える際に、大事なことはその目的です。40代後半~50代に転職したとしても、わずか3・9%しか存在しない「定年のない会社」に居場所を確保することは至難の業。役職定年がない会社、定年が65歳の会社への転職はあり得ますが、結局は65歳で会社員を卒業することになります。65歳からは年金が受給できるものの、「雇われない働き方」で月5~10万円程度の収入を得ていく必要があります。そう考えれば、40代後半から50代の転職は「雇われない働き方」への準備を目的とするのが賢明ではないでしょうか。
50代は一番支出の多い時期ですから金銭的な要素も重要ですが、早期退職金をもらって金銭的なリスクは担保し、収入が落ちても「雇われない働き方」にシフトするために必要なスキルや経験が身につく仕事、ネットワークが広がる仕事へ転職するというのは賢い投資です。
例えば三浦陽一さんは、起業準備のために総合商社を50歳で退職し、靴メーカーに転職しました。きっかけは、45歳で次女が生まれたこと。「このままだとこの子が社会人になる前に定年を迎えてしまう。定年のない働き方にシフトしなければ」と考えたのです。
何で起業しようかと考えたとき、思い浮かんだのが貿易の仕事です。特にヨーロッパ駐在が長く、当時駐在していたイタリアには生きた人的ネットワークがありました。そこで仕事で使えるレベルのイタリア語の勉強を始めたものの、5年の駐在期間を経て帰国して任されたのは、米国との貿易でした。何度かヨーロッパ貿易に戻してもらえるよう直訴しましたが、3年たっても希望は通らず、徐々にイタリアと疎遠になって自分の強みが失われてしまうことが不安に。
そんなとき、仕事仲間からイタリアと深いかかわりのある靴メーカーが人材を探していると声をかけられます。定年まで総合商社にいたほうが年収や退職金がいいことはわかっていましたが、その会社から打診された仕事は起業準備としてはもってこいだったことから転職を決意。1年半その会社で経験を積み、52歳のときに主にイタリア靴を扱う輸入エージェントとして起業を果たしたのです。とても参考になるケースだと思います。